3月11日を忘れない――。フットサル施設とサッカースクールを運営する「NASPA四日市」(四日市市智積町)は、2年ほど前から集めてきた募金を基に、東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県広野町の小学校へサッカーボールを寄付する。【寄付されるボールと高山さん(左)、山口さん=四日市市智積町で】
同社スタッフの高山功平さん(44)は22歳ごろ、競技スタジアムなどを運営する「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町)に勤務していた。震災後には「自分の過ごした地域のために何かできないか」と考えたが、Jヴィレッジは東京電力福島第一原発の事故後、応急対応や廃炉作業の拠点となっていた。
義援金を募るため、クラブハウスに高さ1㍍ほどの募金箱を設置し、「Jヴィレッジや地域の復興支援に」などのメッセージを添えた。コートの利用者らから少しずつ集まり始め、スクールの卒業生が親子で募金をしてくれたこともあり、今年6月上旬までに総額3万9222円が集まった。
募金をそのまま送ることも考えたが、Jヴィレッジ勤務時の知人から紹介され、広野町教育委員会の関係者と連絡が取れた。やりとりを重ね、サッカーボールの寄付の申し出を快諾してもらった。「故郷に誇りを持ってほしい」との思いから、ボールには「地域を誇りに 地域の誇りに」というNASPAのチームスローガンを入れた。
事情を知った、ボールの購入元のスポーツショップ「サンキャビン」(四日市市諏訪栄町)が文字入れを無償で請け負った。同店の山口剛史さん(32)は「思いを伝えるお手伝いをしたかった」と話す。ボールは、寄付した人の顔写真や氏名、メッセージを添え、6月中に広野町へ送るという。
ボール購入と募金の差額は再び募金箱へ収めたといい、高山さんは「これからも、自分たちにできることを続けていきたい」とボールを見つめ、熱く語った。