新型コロナの後遺症を研究、学術論文が欧米学術誌に掲載、三重県立総合医療センターと4診療所

,
【WEB版の学術誌でも見られる論文と三重県立総合医療センターの森谷勲総合内科部長=四日市市日永】

 三重県立総合医療センター(四日市市日永)と四日市医師会所属の医師らが新型コロナ感染症の後遺症について共同研究し、学術論文が国際医学雑誌に掲載された。米国国立医学図書館(NLM)が提供する医学分野の文献情報データベース「Pub Med」でも見られる。

 医療センターだけでなく、地域の民間診療施設で治療した患者も合わせて調べたことで、後遺症の発症頻度や種類、基礎疾患などの危険因子についても偏りのない形で明らかにでき、今後の後遺症対策に有意義な情報を得ることができたとしている。

 今回の研究の掲載誌は「Medicine International」で、論文名は、日本語表記で「新型コロナ感染症による後遺症の発生率とリスク因子について」。著者は、筆頭著者が医療センターの森谷勲総合内科部長、責任著者が医療センターの白木克哉研究センター長。ほかに、笹川内科胃腸科クリニックの山中賢治医師、中村内科循環器科クリニックの中村泰医師、田中内科クリニックの田中淳一朗医師、貝沼内科小児科の貝沼圭吾医師、医療センター看護師の岡本真一さんと家城朋子さん、和田英夫医療センター副研究センター長の計9人。

 研究は、2023年1月末までに医療センターか4診療所が新型コロナ感染症で診療した3399人を対象に、同年7月~9月にアンケートを行い、1113人(32.7%)から回答を得た。この解析の結果、感染後3カ月時点での後遺症の発生頻度は、オミクロン株が12%で、非オミクロン株37%より少なかったことが分かった。

 オミクロン株の後遺症としては、倦怠感(3.0%)、集中力低下・思考力低下(2.4%)、息切れ(2.1%)、筋力低下(2.0%)、咳(2.0%)が多くみられた。高齢になるほど後遺症が発生しやすい傾向もみられ、特に感染時に酸素吸入や入院を要する症状があった場合の発生割合が高いことが分かったという。

 一方、新型コロナ感染症予防のためのワクチンを2回以上接種していた場合には後遺症の発生する割合は11.7%と、接種回数が1回以下の場合の26.3%よりも低かった。

 オミクロン株の後遺症は、肺気腫、ぜん息、リウマチなどの免疫異常、高血圧症が基礎疾患である人に発生する割合が高く、後遺症が6カ月以上続いた人も9%にのぼることが明らかになった。

 これらから、オミクロン株では12%の人に後遺症が見られ、その発生を軽減するには、ワクチンを2回以上接種する、基礎疾患がない、などが挙げられることが明らかにされたという。

 医療センターの森谷総合内科部長、白木研究センター長によると、報道などで耳にした後遺症の状況は、医療に当たる当事者として違和感を覚えることもあったが、単一の医療機関だけでない今回の調査結果では、バイアスを低減した調査研究ができ、納得できる結果になっているという。森谷総合内科部長は「後遺症は、長い人では数か月にもわたるため、基礎疾患の治療をしっかりと続けるなど、重症化しないような予防対策も必要だ。後遺症かも知れないと思う時には、早めに病院に行くようにしてほしい」と話している。(記事中のグラフは三重県立総合医療センター提供)

こんな投稿もあります。