三重県の四日市市議会は12月5日、一般質問が始まった。公共施設の維持管理や費用の問題、中央緑地にあった競技用プールが再建されない理由、自治会活動に市はどう支援すべきかなどについて質疑があった。
いずれも政友クラブの上麻理さん、荻須智之さん、森康哲さん、笹井絹予さん、笹岡秀太郎さんの5人が質問に立った。
〇公共施設の維持管理、何もしなければ今後40年で約867億円不足
上さんは、公共施設の維持管理について市の考えを聞いた。市は人口減少で税収が減ると、今のまま公共施設を維持すると、2038(令和20)年度以降、資金が急速に不足し、市が積み立てている200億円の基金を投入しても今後40年間で約867億円が不足し、上下水道施設や病院施設を除いた額だけても市民1人当たり年間7700円に相当するとの試算などを説明した。このため、施設の撤去や規模縮小などを含めて検討していくという。
上さんは、公共施設は完成後も維持管理に費用が必要で、新図書館など、今後の市の公共施設の計画では、こうした観点を加味した必要額などを提示してもらいたいと求めた。上さんは物価高騰による給食費の公費負担分の動きについても質問した。市側は、2025年度は約23%を負担する見通しで、小学校で1人につき月額1000円ほどの公費負担をする調整を見込んでいると説明した。
〇自治会長の責任が大きすぎないか
森さんは、地域課題の多い現在、自治会の活動は重要だとの観点から、市の支援の考え方を質問した。自治会が設置する防犯カメラに市が補助した事業で、自治会長がプライバシー侵害を理由に裁判に訴えられた例があり、裁判費用を自治会長個人が支払うなどの出来事があったと紹介し、市が何も支援できないのでは、自治会長の引き受け手もいなくなると、問題点を指摘した。
市側は、こうした場合の保険などを調べたが、これという商品がなく、調査、研究を続けていると答弁した。森智広市長は「自治会は大切なパートナーであり、深刻に受け止めている。様々な調査、研究をし、制度や取り組みを考え、出来る限りの対策をしていきたい」などと答弁した。
〇水泳競技場の再建、すれ違いのまま
荻須さんは、中央緑地にあった水泳競技場が、国体準備のために体育館を建築した際に取り壊され、その後、いっこうに再建されないことがおかしいと市に迫った。水泳団体関係者は、競技場は、その後、再建されることを前提として当時の取り壊しに応じたとの立場だという。しかし、市側は、「廃止する方向で説明した。霞ヶ浦プールや昌栄町の温水プールを改修しており、市民レベルの競技は可能だ。現時点では競技用プールは考えていない」などと答弁。質問とは平行線をたどった。
荻須さんは、大矢知・平津事案(産廃問題)の跡地の管理について、県が草刈りをしないために、根を張る樹木が育ち、根が張って雨水が染み込み、課題があると指摘した。ネオニコチノイド系農薬やPFAS(有機フッ素化合物)による水道水の汚染が不安視されるなか、何らかの措置が必要ではないかとも質問したが、市側は水道法の定めによる検査で法的に合致しており、安心、安全で、必要ないと答弁、国の専門家会議の動向などを注視していると回答した。
〇六呂見調整池の現状は
笹井さんは、六呂見地区の調整池計画について今後の予定を含む現状について質問した。市は、雨水処理の幹線を支えるための約2万立方メートルの調整池をつくることになった経緯を説明し、今後、3年程度の工事が必要になるなどの見通しを答弁した。笹井さんは、日永地区の丘陵住宅地からの移動が高齢者など大変だと指摘し、河原田地区で始まったAI活用型デマンド交通の活用など、良い方策を検討するよう求めた。
〇育成就労制度での市ができる支援は
笹岡さんは、6月に可決された出入国管理法などの改正で、技能実習制度が廃止され、あらたに育成就労制度が創設されたことに関し、市の考え方などを聞いた。育成就労制度では3年間の教育期間に技術や知識を得れば永住許可の可能性もある。市は受け入れ企業の外国人雇用やインターンシップ受け入れなどへの補助制度などについて説明し、今後の事業者への影響も、国、県の動向も見ながら対処していきたいなどと答弁した。
笹岡さんは、四日市港の近代化に貢献した稲葉三右衛門翁を後世に伝えるため、現在、JR四日市駅前の中央通り緑地帯にある記念の像を活用してはどうかと提案した。新しい港づくりの将来構想とも合わせ、稲葉翁の偉業をもっと分かりやすく伝えてほしいと求めた。