コンクールで大活躍、四日市工業高校建築科、2年連続最優秀賞含む8つの全国入賞

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【入賞作品を持ち寄った建築科のみなさん=三重県立四日市工業高校】

 三重県立四日市工業高校の建築科が、製図や設計など数々の全国コンクールで好成績を収めている。日本建築協会主催のコンクールで2年連続の全国最優秀賞(全国1位)に輝くなど、今年は8つの全国レベルの入賞を果たした。自らの思いや体験を作品のテーマの解釈に生かすなど、深みのあるアプローチの仕方が高い評価につながるようだ。

 入賞作品は、手描きの鉛筆で作成した図面、活字のように形のそろった文字など、印刷物と見間違うほどの精密さでできている。コンクールに挑戦する生徒たちは1学年40人のうち3~4人が建築研究部に所属して、放課後や休日を使って製作にあたった。こうした熱心な取り組みは、建築科の伝統として30余年も続いているという。

 建築科教諭の有馬智昭さんの話では、自身の体験から社会的な問題点を見つけ出し、コンクールのテーマにつなげるコンセプト作りに1カ月ほどの時間を割くという。制作は6月ごろから始まり、夏休みを含めて約3カ月で仕上げていく。設計図やCG、模型制作を並行して進めていく中で、コンセプトに沿わないと判断した場合には、ふりだしに戻ることもあるが、生徒たちは自分の表現したい建築のために紙面に向き合い、作品を仕上げていくという。

緊張がほぐれた一瞬

■一般社団法人日本建築協会主催の第70回工高生デザインコンクール

 2年生の鈴木仁大さん(17)が最優秀賞を獲得した。このコンクールでは昨年も別の生徒が最優秀賞で、2年連続。過去5年で4度の全国1位を獲得する高いレベルを維持している。

 今年のテーマは「私のまちの私たちのすまい」。鈴木さんは、コロナ禍で町と住まいのつながりが大きく損なわれたことを意識し、各地域で問題になっているクラブ活動の地域移行を利用し、地域と学校をつなぐ建築のあらたな形に挑戦した。

■日本大学主催の第71回全国高等学校建築設計競技

 「招く家」をテーマに、3年生の鎌田偉吹さん(18)が優秀賞(2等)を得た。笹川団地など四日市にも多国籍の住民の交流はあり、外国人が日本文化を知ることに気配りをした内容になった。

■愛知産業大学主催の第23回建築コンベンション

 2年生の尾崎美侑さん(17)が設計部門で最優秀賞(1等)、1年生の川合陽太さん(16)がトレース部門で優秀賞(2等)になった。尾崎さんは、昨今の環境意識の高まりから、いずれ四日市のコンビナート群が役割を終える時が来るのではないかと考え、高い煙突やタンクをコンサートホールなどに変身させ、環境問題の象徴として建物を残すアイデアを展開。川合さんは、刈谷のハイウエイオアシスの実際の施設を細部まで精密に鉛筆で描いた。

■第25回九州産業大学建築設計競技2024

 2年生の谷奏向さん(16)が最優秀賞(1等)になった。住宅地にある建物が地域の閉塞感を生んでいることを意識し、建物の形や催し事を各住戸に分担する仕掛けで境界を緩やかにする町を提案。テーマの「ひとつながりの空間」を実現した。

■日本工業大学主催の第38回建築設計競技

 3年生の松岡祐人さん(18)が審査員賞(4等)を受賞。「肝っ玉母さんのような家、あるいは頑固親父のような家」がテーマで、自分が父母のように親しんだ商店街の人たちを思いながら学童のような居場所を制作した。

■長崎総合科学大学主催の第27回全国高校生設計アイデアコンテスト

 1年生の堀田琴恵さん(16)が優秀賞(2等)、同じく1年生の平田乃愛さん(15)が入賞(4等)を得た。堀田さんは、柱が海藻のようなデザインになっているなど、魚の視点になった水族館を設計した。平田さんはドーム型の建物のなかに、高さの違う床を並行につくり、高さの違いを利用すると、小さな子どもと大人が同じ目線で話ができる場を考えた。

 四日市工業高校は今、全国コンクールでは三重県でのライバル、伊勢工業高校とトップを競い合っている状況だという。コンクールなどで設計に興味を深め、大学へ進学する生徒も少なくない。