乳がんの手術から30年を生きた女性が、人生の山あり谷ありを本にまとめたいと、クラウドファンディングに挑戦中だ。病気だけでなく家族の一大事を乗り越え、医療に関する働きかけもしてきた生き方が、病気のあるなしにかかわらず、多くの人への励ましになりそうだ。クラウドファンディングでの資金募集は11月30日まで。
出版をめざしているのは四日市市笹川8丁目の徳山直子さん(68)。リンパケア療法など体調管理をする「ミュゼドゥクオル(Musee de QOL、生活の質の美術館といった意味)」を開いている。ほぼ1年がかりで原稿を書きため、準備も進めてきた。出版から販売までをトータルに行うブックマーケティングの出版社との仕事で、諸費用を含めた目標金額は385万円を設定している。
クラウドファンディングのキャンプファイヤーで10月17日から募集が始まっており、リターン(謝礼)には本の贈呈のほか、徳山さんのリンパケアなどのチケット、徳山さんの経験からの協力(乳がん補整商品へのアドバイスなど)、医療の専門家と徳山さんによる対談への招待などをそろえている。
3人の子育て中だった徳山さんは、33歳の時、胸に異変を感じ、検査をした。結果はシロ。別の病院ではグレーで要観察。検査を繰り返し、37歳の時にクロ(乳がん)と診断され、片方の胸を切除する手術を受けた。今とは医療技術も異なり、徳山さんは「奈落の底へ落ちた」などと表現している。見舞いに来た夫と子どもが帰ったあと、涙があふれた。
再発の不安を抱えての子育てや、夫の事業を妻として支える日々。がん患者は闘病だけで生きるわけではない。そんな中、医師の励ましもあって、三重県にはまだなかった乳がんの患者組織、三重県乳腺患者友の会「すずらんの会」を設立した。すずらんの花言葉には「幸福の再来」という意味があるそうだ。
これが契機になり、その後、徳山さんはピンクリボン運動の先頭に立つなど、四日市や三重県のがん対策検討部会、キャンサーリボン実行委員会など、医療の専門家とともに地域を考える会議に出席し、自らの体験や知識を役立てる活動も続けている。「ミュゼドゥクオル」を設立したのは2004年。患者に限らず、人を癒すことができる仕事を、徳山さんは天職と喜んだ。
一方で、つい最近も夫が倒れ、間一髪で命拾いをするなど、自らの病気以外にも人生の事件はいっぱい起きた。徳山さんは、それらを乗り越える様子を詳しく書いており、60歳代後半になった今、それらの苦難や経験も、おかげさまで体験させてもらっている、と思えるようになったと記している。それらの体験は本当に山のようで、本になってのお楽しみ。
「私の半生が、読んでくれる人の気持ちを軽くしてあげられるのではないかと思い、原稿を書いてきました。私の体験から、本を読んでくれる方に、生き抜く勇気を伝えられたらうれしいです」と徳山さんは話している。
出版について詳しくはキャンプファイヤーの募集ページへ。徳山さんのメッセージも載っている。募集ページへは以下のアドレスから入ることができる。