保育園の年度当初の待機児童数が、5年続いたゼロから今年、6年ぶりにプラス、しかも、いきなり70人を上回り、全国ワースト3とされた四日市市。市議会でも議論の的のひとつになってきたが、市は11月20日、一般会計予算に限度額1億290万円の債務負担行為を追加し、人材派遣会社に保育士の確保を委託することを発表、市議会に提案する。
市はこれまで、おもに保育園の定員を増やすなどの施策を取り、待機児童ゼロを続けていた。しかし、産業の盛んな四日市には若い共働き夫婦も多く、保育園を希望する家庭が多い。なかでも0歳~2歳の希望が多いといい、富田地区周辺にマンション建設が続くなどの住宅事情もあってか、高まる入所の需要を吸収し切れなかったようだ。
実は、待機児童数の算出には条件があり、入所待ち児童が多くても、特定の園を希望しているなど幾つかの要件に合うと計算に含まれない。関東の大都市だと1000人単位の入所待ちがあっても待機児童数がゼロになっていることがあるという。
待機児童数の発生には、全国的な保育士不足も影響しているという。保育士の人数確保に影響する配置基準では、満3歳以上満4歳未満、満4歳以上なら、それぞれ15人に1人、25人に1人と改正されたが、乳児だと3人に1人、満1歳以上満3歳未満だと幼児6人に1人などと、より保育士の人数を確保しなければならなくなっている。小さな子の入所希望が多ければ多いほど、保育士の確保も大変だ。
市はこれまで、広報を通じた募集などのほか、直接、ハローワークなどを通じて人材募集をするなど、さまざまに取り組んできたという。今回は、これらに加え、お金がかかることは覚悟のうえで、保育業界に通じた人材派遣会社に委託して、これまでよりも広い範囲から人材を確保してもらおうとのねらいだ。
市によると、この措置により、公立保育園、公立認定こども園に計21人の保育士を確保する考えで、順調なら、来年度当初の待機児童解消の可能性はあるという。ただ、保育士不足は全国的な問題になっているなか、派遣会社の活躍しだいともいえそうだ。
課題はまだある。市は全国的な少子化の波が四日市に及んでくるのは確実と考えており、近い将来、保育園への入所希望数のカーブと、少子化により子どもが減っていくカーブはどこかで交わり、少子化が上回っていくと予想している。これだと、保育所の定員を増やせばいいというものではなくなり、保育士の数も含め、バランスを取りながらの現実的な対処が求められる。
四日市市長選には、いずれも無所属で、現職の森智広さん(46)、新顔の伊藤昌志さん(54)、同じく新顔の小川政人さん(76)が立候補している(届け出順)。それぞれが発表している政策などでも、子育てや教育に関する施策では、「保育所等の待機児童ゼロの達成」「こどもの居場所づくりへの支援」「待機児童解消」「教育完全無償化」などの言葉が並んでいる。