投薬などがしっかり施されていれば、健康な人と見分けがつかない難病患者は珍しくない。しかし、どうしても体調がすぐれない時はある。そんな時、職場などの理解がないと、本当につらいものだ。「三重県下垂体友の会」は、患者同士が互いの悩みを共有して解決のヒントを探すことに加え、患者が生きやすい社会環境づくりを求め、国や県などへの要望活動を続けている。
津市にある三重県難病相談支援センターで10月、友の会主催の医療講演会が開かれた。顧問ドクターでもある三重大学医学部の矢野裕医師が下垂体の疾患と薬物治療について解説した。年1回程度で開催しており、患者たちは講演後、交流会を開き、互いの生活について情報交換した。
〇ホルモン分泌の過剰や過少でからだに変調
下垂体(脳下垂体)は、脳の底にあるエンドウマメほどの大きさの内分泌器官で、さまざまなホルモンの分泌を促す刺激ホルモンを分泌する。成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、性腺ホルモン、乳汁分泌ホルモンなどの刺激ホルモンで、人の成長や、体の恒常性(生命維持のために内部環境を一定状態にすること)を維持するために必要で、異常があるとホルモンの分泌が過剰になったり過少になったりして体に変調が現れる。
会の創設者で代表の谷隆太さん(44)は、小学生の時、異常なのどの渇きを感じ、水を大量に飲むためトイレが近く、生活や睡眠に支障が出た。検査で抗利尿ホルモンの分泌が低下していることが分かり、下垂体性ADH分泌異常症と診断された。
〇自らの経験を通し、会の発足へ
その後も成長ホルモンや性腺ホルモン、甲状腺ホルモンなどの分泌低下が見つかり、通院や投薬を受けて体調を維持しながら生活している。ホルモン投与をしっかり受ければ一定の症状は改善するが、体調も崩しやすいため、入院も16~17回経験したという。
福祉事業所に勤務していた時、上司に相談したことがあったが、今後のキャリアアップが難しいと言われたり、時には退職を勧められたりした。「私と同じように生きづらさを感じている患者もいるはず。お互いに病気のことを話すことができ、心が少しでも軽くなれば」と、2017年に友の会を立ち上げた。
身体障害、知的障害、精神障害などと異なり、難病患者は障害者手帳が持てないことが多い。手帳を持つことで対象となる支援は受けられない。障害者法定雇用率制度がその一例で、手帳を持たない難病患者は対象にならないため、就職の点でも困難は大きいという。
〇社会の変化を求め、国や県などへ要望続ける
難病の診断が出ても特定医療費の受給対象から外れるケースはあったが、最近は難病の定義の変更も検討されている。そうなると、特定医療費の受給対象外になる患者が続出し、治療の自己負担額がふくらむ可能性もある。
谷さんは県難病相談支援センターの理事も務めており、ほかの患者団体の人たちと国や県、県議会の会派への要望活動を続けている。難病患者を含め、誰でも過ごしやすい社会を目指していきたいと願っている。三重県下垂体友の会の連絡は090-9337-4231へ。
◇三重県難病相談支援センター11月の疾患別相談予定
5日 原発性胆汁性胆管炎▽7日 膠原病▽12日 心臓病▽14日 オスラー病▽19日 多発性硬化症▽21日 マルファン症候群▽26日 網膜色素変性症▽28日 間脳下垂体疾患(10時~16時、電話059・223・5063、相談無料、面接相談は要予約)