「若い人たちに四日市空襲について知ってもらい、戦争や平和について自分たちで考えてほしい」と、四日市市小杉町の出口敦子さん(62)は、四日市空襲の体験談を語り継ぐ動画を今年8月、ユーチューブで公開した。動画を見た同市立富洲原中学校(同市天カ須賀)の生徒から連絡を受け、同中へ赴き、10月23日の授業で、生徒たちと一緒に平和について考える機会を持った。
8月に公開した動画は、元教員の岡野繁松さん(享年90)が、生前25年に渡り発行していた、昭和の四日市の人の暮らしや思いを掲載した「旧四日市を語る」をもとにしたもの。冊子の編集を出口さんが手伝っていた。2015年末期がんで入院しながら最終集を編集した岡野さんは、出口さんに「旧四日市を頼む」と言い残し他界した。
動画見た生徒「話を聞きたい」
出口さんは19年、冊子の四日市空襲の部分を朗読し、知人に依頼し約15分間の動画「四日市空襲を語り継ぐ」を制作。動画を見た若い人から「感動した」という声が寄せられ、CTYで放映された。若い世代に平和について考えてほしいと、続編の制作を複数の高校に依頼。撮影が始まった学校もあったが完成には至らなかった。
今年の夏、知人の鹿志村始さん(79)に協力を依頼し1作目にも新しい動画を加え「新・四日市空襲を語る」を三部作の作品として8月に公開した。そのニュースをYOUよっかいちは、ウエブニュースとして配信した。
同中の3年生は1年生からSDGsに関する探究学習(SDGs Talks)に取り組み、四日市空襲をテーマにしたグループもある。グループの生徒たちはYOUよっかいちのウエブニュースを見た先生に出口さんの動画を教えてもらい視聴。出口さんに直接話を聞きたいと連絡した。
「貴重な話を聞けた」
出口さんの話を真剣な面持ちで聞いた生徒たち。「空襲の描写は真っ黒に焼け焦げた死体など、今の若い世代にはショックが大きい表現もあり、動画を見てもらうことは難しい」と感じてきた出口さん。それでも生徒たちが、連絡をくれたことをとても嬉しく思ったそうで「遠い外国ではなく、四日市で大勢の人が空襲で亡くなったことや、戦争の悲惨さを知ってもらい、自分自身で、戦争や平和について考えてもらいたい」と話した。また「当時の人が辛い状況でも頑張って生きた力強さも感じてほしい」と語った。
生徒らは四日市空襲に関する資料は少なく、「とても貴重な話が聴けた」と話し、グループのリーダー・森琥汰朗さんは「12月に開かれる校内の最終報告会で、出口さんの話を皆に伝えたい」と語った。
「四日市空襲を語り継ぐ」の第1弾(https://www.youtube.com/watch?v=U3-QdUCfa8c)第2弾(https://www.youtube.com/watch?v=HmJVHxo8aWk)第3弾(https://www.youtube.com/watch?v=HW8NOt6jwew)はこちらから閲覧できる。