三重県四日市市は8月27日、初の「四日市市認知症フレンドリー大使」に市内在住の南條徳男さん(61)を委嘱すると発表した。国の「希望大使」の地方版といい、三重県では初の取り組みという。認知症になっても、その経験などを生かし、勇気や理解を広げる発信をしてもらう。
同日の定例会見で森智広市長が説明した。国は、認知症になっても希望をもって暮らすことのできる姿を自らの言葉で積極的に発信する認知症本人による「希望大使」の設置を推進している。四日市市も「認知症フレンドリーなまち」の実現をめざしており、認知症に対する関心や正しい理解を深めるため、地方版の大使を独自に設けることにした。
南條さんは、四日市市に生まれ、大学卒業後、企業保険代理店に入社し、東京、京都の保険代理店で勤務した。業界団体の設立にも関わり、事務局長などを兼任したが、そのころから体調を崩し、うつ病との診断を受け、55歳で保険業界を引退した。その後も仕事は続けたが、もの忘れなどが増えて仕事に影響するようになり、昨年、若年性認知症との診断を受けたという。
南條さんは「自分の若年性認知症にいたる今までの経験や体験を生かし、お困りの方のお役に立ちたいと考えています」とコメントを寄せた。
南條さんは、9月14日に四日市市文化会館で開催される市の認知症市民公開講座での任命式に出席する。大使としての任期は2024年9月1日~2026年3月31日の2年で、イベントでの講演、広報への寄稿、広報映像への出演など、市の認知症の普及啓発活動に参加する。また、市が開催する医療従事者、介護従事者の研修や、認知症サポーター養成講座などでも発言してもらうという。
四日市市によると、市内の認知症の人は約8000人と見込まれ、南條さんのような若年性認知症も100人を超えているとみられるという。