キャッシュレス時代の新紙幣、手元にはゆっくり? 銀行、スーパーなど準備万端

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【プログラムの変更も終わり、新紙幣への対応準備も整ったレジの機械=鈴鹿市稲生4丁目】

 戦後6番目となる新紙幣が7月3日に発行される。新1万円札の肖像画は渋沢栄一で、明治期に四日市の経済にも力を貸し、少し身近な存在だ。とはいえ、これまでの紙幣と異なるのは、世の中、キャッシュレス時代の真っ只中にあること。新紙幣の流通も、ある意味「マイペース」になりそうだ。

 四日市市に本店がある三十三銀行は、6月20日にホームページや営業店での掲示で、新紙幣の取り扱いが発行日より1日遅い4日午後1時以降になると告知した。3日の朝早くから店頭に並ぶなどの混乱を防ぎ、お客様に迷惑をかけないようにするためだという。

 営業店は115店舗ある。具体的に何時にどのくらいの金額の新紙幣が届くかは秘密だが、各店にも届く常識的な数が運ばれるように連絡がしてある。当初の新紙幣の扱いは窓口のみとし、初日からATMで新紙幣が手に取れる状況にはならないようだ。

〇新紙幣を一番乗りで、という人は減少?

 約1000台というATMや営業店・本部現金機器類などは、2023年2月からプログラムの改修や機械の改造を行ってきた。機械の供給業者が、それぞれの店でプログラムを改修し、テストも済ませている。ほとんどのATMには外見上の変化はなく、利用者が気づかない形で準備は整っている。

新紙幣の取り扱いが7月4日からになることを告知する三十三銀行の店の掲示

 戦後6番目の発行のため、アルファベットABCDEFの順でF券と呼ばれる新紙幣は、2004年11月に発行されたE券から約20年ぶりの発行。おもに偽造防止の技術向上のために紙幣は入れ替えられるが、今回は世界初の3Dホログラムなど、最新の偽造防止技術が何重にも施されている。

 同行の理事で事務統括部長でもある山本茂樹さんは、E券発行の時には営業を担当していた。当時の紙幣にはすでに偽札も見つかっていて、偽造防止の意味からも、早く新紙幣を流通させようという国全体の流れがあったという。クレジットカードは使われていたものの、「どうしても、一番に新紙幣を手に入れたい」と話すお客様は多かったそうだ。

 「キャッシュレス時代になって、多額の紙幣を財布に入れて持ち歩かない状況が定着してきた。新紙幣への関心も前回とは違って、それほど、急いで新紙幣を流通させるという雰囲気は感じられない気もします」と山本さんは話す。

〇20年後の新紙幣の流通はどんなふうに?

 四日市に本社があるスーパーの「一号舘」では、各店のレジの機械のプログラム変更が終わっている。系列の「ミスタートンカチ」「F☆マート」を加え、北勢地域などに31店舗があるが、5月に毎日1、2店のペースで作業を進めたという。レジの業者が店で作業を進め、大きなトラブルもなく、準備万端だ。

 鈴鹿市にある大型店の「F☆マート サーキット通り店」では、約20台のレジの機械がずらりと並んでおり、すべてが新紙幣に対応できる状態。最近のスーパーで主流になりつつあるセルフレジにも対応している。

 経営企画室事業戦略課兼販促課のマネージャー富永真一さんは、ストレスのないレジの環境づくりは、店を愛してもらううえでも重要だと考えている。キャッシュレスへの対応が進む一方、小銭をひとつひとつ財布から出そうとする年配のお客様も、せかされる気持ちにならないようにしたいと考えている。

 「ただ、キャッシュレスの流れが加速していくことは間違いなく、20年後の次の新紙幣は、非常に抑えた流通になるのではないでしょうか」と話した。

 四日市市西日野町の旧四郷村役場「四郷郷土資料館」では、7月20日~9月29日、新1万円札の顔「渋沢栄一」と市のかかわりも紹介する特別企画展「四日市の近代化の礎を築いた伊藤小左衛門・伊藤伝七」を開催する計画だ。