「とにかくあきらめるな」「一緒に頑張ろう」――。三重県立四日市西高校(四日市市桜町)の硬式野球部は今春、前任の昴学園(多気郡大台町)を、昨夏の三重大会で17年ぶりの初戦突破に導いた高橋賢監督(31)となった。新体制のもと、夏の三重大会での「1勝」を目指し、日々の練習に汗を流している。
高橋監督は、異動が決まり、初めて野球部に顔を出して感じたのは「皆、野球が好きだけど、何か物足りない、野球に飢えている」ということ。以前は、自主練習に頼らざるをえない状況もあったそうで、高橋監督は「部員らに言ったのは、とにかくあきらめるな、一緒に頑張ろう」とまずは徹底して練習量を増やした。
チームワークの良さ 「一球への執念」
部員は現在、3年生9人と2年生3人、新1年生は3人とマネジャー2人で、学年の上下に関係なく意見を出し合うことが出来る雰囲気がある。チームをまとめるのは清水嶺児主将で、高橋監督は「苦しい状況でもチームをまとめたのは清水」と信頼を寄せる。これまでについて清水主将は「真面目だけど静かな雰囲気。でも最近はどんな時でも元気に声が出せるようになりました」と話す。4月7日、高橋監督となり初の対外試合となった桑名北高との練習試合は守備のミスから崩れて結果は「ボコボコにやられた」という。しかし、「とにかく練習」と毎日の練習で「勝ちたい」という情熱がさらに強くなった。
4月の練習試合、チーム打率.142で「このままでは作戦も何もない」と高橋監督。部員それぞれの打率や出塁率を貼り出し、「一球の重みを考えるようになった。もっとチャンスのときに声を出して1点にどん欲にならないと」と清水主将は話す。
「野球部の歴史を変える」
ゴールデンウィーク最中の5月3日、四日市西高のグラウンドに木本高校(熊野市)を招いて練習試合が行われた。1試合目、2回に満塁のピンチを迎えた四日市西高は、守備につく部員もベンチの部員も「皆がとるからストライク入れていこう」など奮闘する投手へ、大きな声援をかけた。マウンドに集まり、「しっかり守るから」と投手だけに背負わせない、声掛けもチームワークの良さを感じさせた。試合には負けたが、「相手チームの守備や打撃から学ぶこともあった」と試合中も対戦相手をよく見て学ぶという貪欲さを見せた。
「高校野球は3年生になればどのような結果でも終わりが来る、だからこそ、毎日の練習を大切にしてほしい」とグラウンドで部員に激を飛ばす高橋監督、「夏の1勝がまずは目標。四日市西が甲子園に出場するよう、歴史を変えることを目指す」と話す眼差しの先には、気合十分の声出しで白球を追い、汗を流す部員の姿があった。