国の重要文化財に指定されている長快作「木造十一面観音立像」(鎌倉時代)が、3月19日、京都での約10カ月の修復を終えて三重県菰野町のパラミタミュージアムに戻ってきた。同日午後、修復記念の披露会があり、展示も再開した。像の傾きなども調整され、お顔などの表面が輝くようにきれいになったという。
披露会では、パラミタミュージアムの学芸員衣斐唯子さんと三重県総合博物館の学芸員瀧川和也さんが、修復の内容や像制作の歴史的な背景などについて説明した。以前から像を見てきた衣斐さんは「修復前に比べ、すごくきれいになって、輝きが増したと感じます」と興奮気味。「漆の剥落しそうな所が止められ、右手の錫杖の立ち方や、前かがみになった像の傾きなども、しっかり調整していただきました」
瀧川さんは、この観音立像が、奈良・長谷寺の本尊である十一面観音の形式を習ったもので、仏像の足下の墨書から、制作したのが長快(ちょうかい)で、快慶の流れを汲む仏師だと考えられていることなどを解説した。
この観音立像は、長谷寺の本尊制作時の余材である「御衣木(みそぎ)」が用いられたと見られている。長快の作と特定されているのが京都・六波羅蜜寺にある弘法大師像とパラミタミュージアムの像との2体のみであることなど、歴史的な観点からも貴重な作であるという。
披露会は報道関係者のほか一般入館者にも公開され、多くの人が像を取り囲んでいた。
パラミタミュージアムの木造十一面観音立像は、かつては奈良の興福寺に伝来したが、明治以降の廃仏毀釈のなかで行方が分からなくなっていたという。2008年5月にパラミタミュージアムの所蔵となり、常設で公開された。その後の調査研究で、2016年8月に国の重要文化財に指定された。昨年6月から公益財団法人美術院国宝修理所で修復作業に入っていた。