ネパールのバディ族は「その日の食べ物のため9歳の女の子が売られてしまう」こともある。「バディ族の子どもたちは、バディ族が守る」と立ち上がった姉妹がいる。妹のサリータ・バディさん(25)は今、四日市市の英会話教室で働きながら、母国にいる姉とバディ族への支援活動を続けている。
ネパールで生きるために必死で英語を学んだサリータさんは、昨年12月、バディ族を支援する活動をしているウィリアムズゆりさんが運営を任されている英会話教室で、教室に通う子どもたちにも真摯に向き合っている。
カースト制度の影響もあり、バディ族は差別を受けてきた民族。サリータさんも9歳で支援団体に救出されるまでは、食べ物に事欠き、読み書きもできなかった。
ネパールの支援団体が、子どもを保護し教育を受けさせるとバディ族に持ち掛けたが、親は団体を信用できず、我が子を託す人は居なかった。その中でサリータさんは「勉強して、働けるようになりたい」と意欲を示し、最初の一人としてカトマンズの児童養護施設「ライトハウス」に身を寄せ、学校に通い英語も学んだ。後に姉のシータさん(28)も同じ施設に入居した。
2020年、シータさんは「支援団体の一人ではなく、自らの活動でバディ族の子を助けたい」と、日本の支援団体「ゴスペルエイド」の協力を受けて独立。新しい養護施設「ゴスペルホーム」を建設した。当時ゴスペルエイドの理事を務めていたウィリアムズさんにはその時に出会った。
サリータさんはネパールで大学に通い、職を得るため様々な仕事にチャレンジしたが、根強い差別のため就職は叶わなかった。モデルのオーデションを受け、バディ族出身と明かして合格し、審査員からの応援も受けたが、なかなかプロにはなれなかった。シータさんがウィリアムズさんに相談し、サリータさんは日本で働くことになった。
ウィリアムズさんは、焼菓子を販売し収益の一部をバディ族の支援に充てる「BADI CAFE」の運営をしている。今年、バディ族支援に加え、能登半島地震の被災者を支援するための寄付金付きの焼菓子セットを販売する企画を考えた。バディ族の子どもたちが描いた絵に日本の子どもたちが色を塗り、その絵でラッピングする。バディ族の子どもたちに、「自分たちも助ける側になれる」という経験をさせ、自信を持たせるのが狙いだ。
サリータさんは1年後にネパールへ帰国し、日本での経験を生かし、姉と一緒に「ゴスペルホーム」の子どもたちに職業訓練などの自立支援をする予定だ。「バディ族の力だけでは乗り越えられない試練に、日本からも力を貸してほしい」とサリータさんは話す。
「BADI CAFE」の情報はホームページ(https://www.badicafe.com/)へ。