近鉄富田駅の地下の通路や階段を明るく、親しみやすくしようと、三重県立四日市高校の生徒たちが10月30日、それぞれのデザインを発表するプレゼンテーションをした。最終段階に残った20余の案を近鉄の工事責任者らが2時間余をかけて全部見て、狙いを聞いた。持ち帰って検討を重ね、来年度の改修工事に生徒たちのアイデアを盛り込んでいくという。
近鉄鉄道本部の名古屋統括部で駅の工事を担当する中村大輔さんは、昨年暮れから今年にかけて富田駅に立ってはアイデアを考えていた。なかなかひらめきが来ない時、駅のすぐ西にある四日市高校が目に入り、「駅との関係がこれからも長く続くこの学校の生徒たちにこそ」と思い、学校に協力を求めたという。
この春に入学した1年生のうち、芸術科目で美術を選択した119人が5月から7月にかけて、授業で駅のデザインに取り組んだ。生徒たちが今の駅を見て思うことは、ほぼ一致していて、「地下の通路が暗くて気が沈む」だったようだ。
プレゼンでは、駅舎がクジラの姿のデザインということもあって、海や空を思わせる青を使った絵を描き、通路を明るくしようとするアイデアが多かった。地下の通路を海底、階段を砂浜に見立て、地上に近づくほど空などの明るい色が広がるようなアイデアや、地下通路そのものをクジラのおなかの中にして、そこに難破船や宝物などがあるという楽しい物語にした生徒もいた。
中村さんによると、大阪の近鉄喜志駅の改札外階段を大阪芸術大学の学生がデザインした例はあるが、高校生のデザインでの協力は珍しいという。「ひとつの作品を選ぶよりは、みなさんの思いをできるだけ多く実際のデザインに盛り込むような改修工事にして、長く愛される駅にしたいと思います」と話していた。