神坂雪佳ってだれ?という人に見てほしい、パラミタミュージアムで琳派とつながる創作の背景に迫る

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【その対話が伝わってきそうな、人気が高い作品という「『百々世草』より『狗児』」=菰野町大羽根園松ケ枝町」】

 図案家であり画家として活躍した神坂雪佳(かみさか・せっか1866~1942)を紹介する「つながる琳派スピリット 神坂雪佳展」が10月6日、三重県菰野町のパラミタミュージアムで始まった。創作の奥にある琳派への敬愛と、琳派の芸術を自らの中で昇華させた数々の作品を楽しめる。11月26日まで。

 神坂雪佳は20世紀初頭の欧州を視察し、当時に最先端の芸術にも触れた。しかし、その経験から、日本古来の美を再認識し、図案家でもあったことから、装飾芸術の先達として琳派を深く意識するようになったという。

 展示では、神坂雪佳が影響を受けた本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳などと続く琳派の紹介から、その影響のもとで描いた図案や、それが漆器や陶芸品などに実用化された姿、琳派を汲みつつ、図案家ならではの独創性を感じさせる絵画作品の、大きく4章立ての構成で82点を展示している。作品は、琳派コレクションで知られ、神坂雪佳に早くから注目した細見美術館(京都市)の所蔵品と、所蔵家たちの品を集めて構成した。

 丸っこい線で描かれた子犬がカタツムリをじっと見つめる「『百々世草』より『狗児』」は、人気の高い作品のひとつという。展示の後半にある「金魚玉図」も、やや漫画化されたような正面を向く金魚が描かれているが、その金魚が見つめるのは絵を鑑賞する人とすれば、と少々不思議な体験ができる作品になっている。

 「杜若図屏風」は、尾形光琳の「燕子花図屏風」を意識したと思われるが、琳派への尊敬の気持ちのほかに、花の描き方がデザイン画的な工夫を加えてあるようにも見え、自らの作品の独立性を強く主張しているようでもある。

 漆器や陶器などに見られる図案は、完成品での見栄えを見通しており、「菊花透し彫鉢」の陶芸作品と、並んで展示された「陶磁器図案」を見比べると、神坂雪佳が完成した作品を強くイメージしていたことが見て取れる。

 展示は前期(~10月30日)と後期(11月1日~26日)に分かれ、一部作品の入れ替えがある。10月22日午後2時から、「図案家・神坂雪佳と琳派」と題して細見美術館主任学芸員の福井麻純さんが講演する(無料、要入館券)。11月12日午後2時からは鈴鹿市立桜島小学校リコーダークラブによる演奏「歌え、リコーダー♫~ありったけの心をこめて」がある(無料、要入館券)。

 入館料は一般1000円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。