1959(昭和34)年の伊勢湾台風で犠牲になった人の冥福を祈る「伊勢湾台風殉難者慰霊献花式」が9月26日、四日市市富田一色海浜緑地公園にある慰霊碑前であった。関係者の高齢化も進み、遺族の出席が少なくなりつつあるというが、64年前の記憶はなお鮮明に残っている。【献花し、手を合わせる遺族のみなさんら=四日市市富田一色町】
ちょうどこの日、日本の風水害で最大ともされる台風災害に見舞われ、東海地方は大きな被害を受けた。四日市市だけでも110人を超える人が亡くなった。献花式に出席した鈴木幸子さん(92)は、夫や長女ら家族4人を屋根の倒壊で失った。おなかの中にも子がいて、長男を背負い、からくも救助されたという。
「地面より70センチかさ上げした家だったのに、2階へ上がる階段の上から2段目まで水が来た。今は、こうして献花式に来られるだけでありがたい」(当時の状況などを刻んだ慰霊碑)
富洲原地区連合自治会長の坂本寛さん(81)は当時、高校生。腰のあたりまで水に浸かって近所の家に飛び込み、ふとんごと水に浮いていた人を助けた。「火事場のなんとかで、どうやって助けたのか自分でもよく覚えてない」と、当時の緊迫した町の様子を語った。
献花式は四日市市の主催で、森智広市長、樋口龍馬市議会議長らが出席。森市長は式辞で「今年も全国的に風水害が多く、被害も大きく、対策の必要性を実感している。防災先進都市の実現へ努めたい」と決意を述べた。(式辞を述べる森智広市長)