30年以上、四日市市内の高校の野球部で指導し、県立四日市工業高校(同市日永東)の甲子園出場に貢献した四日市市松本の松岡嘉典さん(65)は、三重県高校野球連盟の理事として、大会の運営に尽力した。日本高野連と朝日新聞社が選ぶ「育成功労賞」を受賞した。【甲子園での思い出の品を前に語る松岡さん=四日市市松本】
中学から野球を始め、大学は準硬式野球部に所属。1986年に県立四日市中央工業高校(同菅原町)で野球部の指導を始めた。95年ころ県高野連の理事になり、開会式などのアナウンスを務めた。
97年に四日市工業に転任。高野連の理事としての任務があるなか、副部長として指導もし、他校の指導者からも野球に対する考え方や指導の仕方を学んだ。99年、四工が夏の県大会で逆転サヨナラ勝ちし、甲子園出場を決めた。閉会式のアナウンスで四工を紹介する時は、万感の思いで言葉を詰まらせた。翌年、四工が選抜大会に出場した際には、責任教師(部長)として甲子園へ。前年度は副部長で、スタンドで見守ったが、初のベンチ入りをした。この場所を目指し叶わなかった指導者や部員に思いを馳せ「選手や監督のおかげで自分は憧れの場所に立たせてもらった」と感涙した。
2013年は、県立四日市農芸高校(同河原田町)へ、四工時代に学んだことを農芸高で実践。年下の監督からも信頼され共にチーム作りに励んだ。
「野球にとって大事なのは、負けた時の潔さと、勝った時の謙虚さ」と語る松岡さん。負けた時は仲間のミスを指摘するのはなく、自分の至らない点を認める謙虚さが必要。また連勝する時、おごりが生まれる。上級生が率先してグラウンド整備をするなど、謙虚な気持ちが必要だという。
選手の体調を考慮し、投球制限やタイブレーク制が設けられるなど変化を迎える高校野球。松岡さんは「時代が変わっても、互いの良いところを認め助け合い、時には自分を犠牲にする和の力を大切にしてほしい」と語った。