「江戸の遊び絵づくし~不思議でおもしろい浮世絵の世界」展が8月4日、三重県菰野町のパラミタミュージアムで始まった。人の身体を組み合わせて人の顔を描くなど、さまざまなトリックを仕組んだ浮世絵の作品約115点を紹介している。和歌などの古典の知識が必要な知的な遊び絵もあり、江戸時代の庶民の知識の豊かさも見えて興味深い。10月1日まで(会期中無休)。【東海道四谷怪談のお岩さんが現れる絵=菰野町大羽根園松ケ枝町】
主催者によると、江戸の庶民の遊び心を満足させようと、浮世絵師や版元らはさまざまな知恵を絞って新しい工夫を凝らした「遊び絵」を発表。庶民はそれらを手に入れて、家族や友人らとパズルを解いたりゲームをしたりする感覚で楽しんだようだ。見て考えるだけでなく、自分で操作して楽しむものもあり、実際に体感できる作品も幾つか展示されている。
歌川国芳「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」は「寄せ絵」の傑作とされるひとつで、人の顔をよく見ると、いくつもの人の身体でできている。歌川藤よし「有卦絵 ふ尽しの福助」は、福助の顔が、眉毛は筆、目は鮒(ふな)、鼻は「ふ」の字、耳が瓢(ふくべ)、のように「ふ」のつくもので描かれている。
七福神が建てているのは何?と問う絵。答えは「壽」の文字。これは三代歌川豊国による「七福神 壽 柱建之図」、豊原国周の「四谷怪談 隠亡堀戸板返し」と楊洲周延「四谷怪談 蛇山庵室」はいずれも歌舞伎「東海道四谷怪談」の有名な場面を描いたからくり絵。お岩さんらの亡霊が現れて、江戸の庶民もしばし暑さを忘れたのではと思わせる。
なお、展示室へ向かうスロープのところどころに、萬古焼の作品が展示されている。これらも浮世絵の企画に合わせ、遊び心に満ちた作品を集めているので、お見逃しなく。
期間中、関連イベントがある。8月6日午後2時から記念講演会「江戸のユーモア『遊び絵』の世界」。国際浮世絵学会常任理事の稲垣進一さんが話す。無料(要入館券)。8月19、20、26、27日は午前10時からと午後1時から「こども木版画体験 多色摺に挑戦」がある。対象は小学生以下で各回定員5人。無料だが、付き添いの保護者は要入館券、事前申し込み(059-391-1088)制で、残枠はわずか。9月10日午後2時からはパラミタコンサート。フルートトリオkahihiのオータムコンサート。無料(要入館券)
パラミタミュージアムの入館料は一般1000円(4枚セット券3000円)、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。