東京2020オリンピック・パラリンピック聖火リレーが7日三重県で始まり、四日市市安島の「四日市公害と環境未来館」からスタートした。同市の第2走者を務めたのは電動車いすで生活する公募ランナーの会社員、青木健太さん(26)。大役を果たした青木さんに話を聞いた。【第1走者の瀬古利彦さんからトーチの火を引き継ぎ出発する青木さん(中央)=四日市市安島で】
昨年、新型コロナの影響で五輪が1年延期になり、青木さんは「来年も無理ではないか」と思ったそうだ。昨年末には体調を崩し入院し、聖火リレーが行われるか半信半疑だったという。今年に入り、青木さんが聖火を運ぶのに、介助者が持って一緒に走る方法もあると実行委員会に提案された。青木さんは「自分で運びたい」と、電動車いすにアタッチメントを取り付け、トーチを固定しようと、母校の県立四日市中央工業高時代の恩師の柳川宏幸先生に相談し、製作してもらった。
第一走者のロス・ソウル五輪マラソン代表の瀬古利彦さんから聖火を受ける際は、青木さんのボッチャや入浴の介助をする加藤亮太さん(27)が青木さんのトーチを持ち、瀬古さんとトーチキス。車いすにトーチを固定し、あごで車いすのレバーを操作し、走り出した。緊張のあまり頭が真っ白になったそうだが、沿道からの拍手や応援の声は聞こえたそうで、無事大役を果たした。
青木さんは高校時代柔道の練習中に頸椎(けいつい)を損傷し、首から下の自由を失った。2年間入院し、現在は在宅で仕事をしている。障がいのある人も楽しめる球技「ボッチャ」に挑戦し、訪問介護を受けて一人暮らしをするなど、前向きに暮らしている。「柳川先生と加藤さんの助けがなければ聖火リレーができず、本当に感謝している。重い障がいがあっても人前に出てできることがあると知ってもらい、励みにしてほしい」と語った。
【聖火ランナーを終えた青木さん(左)と加藤さん】