一番好きだというトンボを始め、さまざまな昆虫を観察している四日市市天カ須賀の富洲原中1年、水谷洋稀君(12)は、「水生昆虫の王者」とも呼ばれ、レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に分類されているタガメのつがいを飼育し、産卵・孵化にこぎつけた。【飼っている雌のタガメを手にする水谷君=四日市市天カ須賀で】
水田や河川の水質悪化などで個体数が減っているタガメだが、水谷君が特に興味を持ったのは、生まれてからの熾烈な生存競争と、産卵期の雌雄の習性だった。飼育して観察しようと、昨春、愛好家の男性とともに県内の池で雌のタガメを採取し、夏に雄を譲り受けた。
その時は繁殖期を過ぎていたため受精に至らなかったが、今年5月上旬、雄と雌を同居させた。雌のほうが大きく共食いもするため、雌を満腹の状態にし、数日ずつの同居を繰り返した。10日ほど経ったころ、水谷君は水槽の中に置いた木に卵を見つけた。雄は卵を乾かさないよう水をかけて外敵から守るが、雌はこの段階で卵を壊してしまう習性があるため、別居させた。
【タガメの幼虫(提供)】
6月初旬に孵化し、2回の産卵で計140匹ほどが誕生したが、共食いなどで減り、最終的に残った10匹ほどを2つの水槽に分けて飼育している。餌には、農薬の害がない森に生息するモリアオガエルのオタマジャクシを自身で採取し飼育するこだわりぶりだ。
タガメの観察を通して「本や図鑑などで知る生態以上に熾烈な競争を間近で見られて、自然界の掟を実感できた」という水谷君は、老若問わず昆虫の愛好家と積極的に交流するそうで、時には夜明け前に起きて日の出とともに観察することも。将来は「トンボの保護や研究の仕事」に就くのが夢だそうだ。
YOUよっかいち7月18日付185号3面から