今年でボクシングに出会って60年、会長を務める四日市ボクシングジム(四日市市新正)で、国吉豊さん(75)は毎日のようにミットをはめ、リングで幅広い年代の拳を受け止める。
生まれは沖縄県。高校1年生でボクシングを始め、インターハイや国体へ出場。就職を機に愛知県豊田市の自動車整備工場で働きながらボクシングを続けた。
同じ沖縄出身のボクシングジムの代表に声をかけられて東京へ。21歳でプロテストに合格し、全日本ライト級新人王、日本ランキング4位にまでなった。右ストレートと左フックを武器にライバルとしのぎを削った。
兄が働いていたこともあり、23歳で四日市へ移り住んだ。翌年にはアマチュアボクシングの指導を始め、練習場所の確保に苦労もしたが、協力者も増え、ジムを開いた。
最初は、とにかく強さを求める指導だった。だが、今は「強さだけではだめ。ボクシングで得たことを社会で生かしてほしい」と、ルールを守ることやあいさつの励行などを子どもたちに説くようになった。
リングでは一人で戦うが、その後ろにはセコンドにつく人、練習相手など多くの人の支えがある。しかし、勝つことばかりを教えれば、自分を支えてくれる人への感謝さえ気付かずに大人になってしまう。
「会長、よろしくお願いします」。ジムに元気な子どもの声が響く。「よし、やるか」と笑顔でリングイン。子どもたちが真剣な表情でシャドーをする姿に「みんな強くなるぞ」と激を飛ばす。
「子どもは可能性があって見ていて楽しみ。私の人生の半分以上、ボクシング。人の輪も広がって、思い出がいっぱい」と笑顔で話している。
