南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の発表でいったん高まった防災意識も、その後、長続きしていなかったことが、三重県の三十三フィナンシャルグループのシンクタンク、三十三総研(四日市市)が実施した「防災・被災時を想定した意識調査」の結果から浮かび上がった。被災時に家族とどこで落ち合うか、連絡をどう取るか、水や食料の備蓄など普段の備えについても心配される状態が見られたという。3月11日、東日本大震災から14年を迎えた。
調査は、臨時情報が発表された2024年8月から約3カ月が経過した同11月に実施。三重県内の500人、東日本大震災で被災した宮城県、岩手県に住む500人の計1000人にインターネットによるアンケートで実施した。
〇持続しない防災の取り組み意識
臨時情報発令後の防災意識の変化について聞いた質問では、「以前から十分な対策を実施しており、行動に変化なし」が全体で10.1%、「新たな防災対策を始め、現在も継続的に実施」が16.0%、「新たな防災対策を始めたが、現在は取り組みや意識が低下」が16.4%、「関心を持ったが行動には移さなかった」が30.6%、「特に関心をもたず変化なし」が26.9%の結果だった。
この結果からは、防災意識が一時的に高まり、継続的な努力を続ける人はいるものの、ほぼ同程度の人が取り組みの意識が持続しておらず、さらに、いったん関心を寄せても行動にはつながっていない人の割合が多かったことがうかがえる。
三重県の回答では「新たな防災対策を始めたが、現在は取り組みや意識が低下した」が21.6%にのぼり、南海トラフ地震の想定域にありながら、東日本大震災の被災県の11.2%を上回り、防災への意識が薄らいだことが読み取れた。逆に、想定域をはずれているためか、被災県では「特に関心を持たず変化なし」が31.2%で、三重県よりも関心を寄せなかった割合が高かった。
〇家族の連絡方法も事前の相談なし?
災害発生時にばらばらになっていることが想定される家族が、どのように連絡を取り、集合場所を決めているかの質問では、「特に準備はしていない」が全体の52.3%で、「集合場所や再開の手順を決めている」は21.8%にとどまっていた。家族間で連絡が取れずに混乱することが危惧される内容だ。

一方、この質問を性別や年代などで見ると、女性40代と三重県の40代が「集合場所や再開の手順を決めている」の割合が高かった。逆に、50代、60代では「特に準備をしていない」の割合が高く、男性60代61.0%、女性50代62.0%の割合で、シニア世代が取り残される心配が表れたともいえる。
調査では、「水や食料が大事と思っていても長期で準備しているのは3割」「自宅が崩壊したら、地域の指定避難所に一時避難するが5割弱で、自家用車3割弱、県外への一時避難は1割強」「避難所生活では食糧や水の確保に不安を感じるほか、プライバシーや衛生環境への不安も大きく、性犯罪の増加や暴力、盗難などへの不安もある」ことなどもまとめられている。調査結果は三十三総研のホームページで公開されており、年代や性別による分析なども読むことができる。