高齢化や少子化などが影響して路線バスが廃止されるなど、住民の足の確保が課題になっている。三重県四日市市は11月14日、スマホアプリなどで乗車希望の情報を入力すると、かなり直前でも運行ルートに入れてくれるAI活用型のデマンド交通「のり愛みかん号」の実証運行事業を始めた。
運行開始式がこの日、河原田地区市民センター駐車場であり、市や地区、車両運行を担当する三重近鉄タクシー、予約管理などをする三重交通株式会社、ネクスト・モビリティ株式会社などの約50人が出発を祝った。
四日市市の舘英次副市長は、地域の交通手段としてだけでなく、コミュニティー形成にも役立つことを願ってあいさつした。河原田地区連合自治会長の吉田隆一さんは、準備の中心になってきた地区マスタープラン推進委員会のメンバーを紹介し、18回の会議を重ね、地域住民2000人のアンケートで住民の多くが出かける先を調べるなど、今回の運行を支えてきたと説明した。「この運行が15年から20年先を見据えた活動になるよう、この出発点を成功させたい」とあいさつした。
AI活用型乗合デマンド交通「のり愛みかん号」は、乗車定員8人のワゴン車型の小型バスのようなタクシーともいえ、決まった停留所を結んで走るのではなく、予約に応じてAIが最適な配車や運行ルートを決めながら複数の人を乗せて走る。バスとタクシーの中間のような走り方ともいえる。名前は、地区の人が「乗り合い」をし、地区がミカンの産地でもあることから名付けたという。
実証運行は2025年2月7日までで、平日の午前6時半から午後8時まで。土日祝日と年末年始は休み。アプリか電話での予約が必要で、地区では十数回の利用説明会などを開いてきた。乗降所の「イオンタウン四日市泊」や「内部駅」と、路線バスなどで乗り継いで日永カヨー、三重県立総合医療センターを行き来する場合は乗り継ぎの割引があるという。期間中に出てきた意見などをまとめ、来年の2回目の実証運行での改善に役立てたいという。
河原田地区は、鉄道駅「河原田駅」(JR東海、伊世鉄道)があるものの、2018年に地区を走っていた路線バス「四日市鈴鹿線」が廃止になり、市街化区域内の約6割が交通空白地域(鉄道駅から800m、バス停から300mよりも離れた地域)になった。約6割の空白化は市内でも最も高い割合といい、同市は市街化区域では初めてのデマンド型交通をめざすことにしたという。