三重県四日市市の市立橋北中学校で10月23日、卒業生の画家山内大介さん(43)の美術の特別授業があった。昨年に続く2回目で、3年生全員が21日から約2時間ずつ3日をかけ、自画像を完成させた。のびのびと絵の具の色を重ねる後輩の姿に、山内さんもパワーをもらった様子だった。
今年の3年生は35人で、昨年より10人ほど多い。1人ずつ、F3サイズの本物のキャンバスをもらい、油絵のように重ね塗りもできるアクリル絵の具で彩色する。通常の授業ではできない体験だ。
21日の1日目は「自由になんでも描きなさい」。みんな、キャンバスにのびのびと絵の具を走らせた。2日目、「今の状態を生かし、自画像を描きなさい」。生徒たちは「えーっ」と大きな声で驚いた。
自由に描いてきたところへ、予想していない課題が加わって、「どうしたらいいの」と悩む生徒たち。でも、そこを乗り越えて作品を作り上げていく感覚は、いろんな課題にぶつかる人生の場面と似ている。この授業を通して、そんな力を培ってほしいというのが山内さんの思いだ。
できあがった作品は、1人ずつスクリーンに投影し、山内さんが色使いや、配色、個性的な表現などの優れた点を解説した。暗い色の中で明るい色が効果的に使われていたり、画面全体の雰囲気が、作者の表情をしっかりとらえていたりと、どれも力作ぞろいで、山内さんは「大人になると、画面の中でまとめようと考えてしまいがちだが、みんなの絵が完成していくのを見ていて、どこへ向かうか分からない若さのパワーというか、そんな力を感じ、とてもうらやましいです」と話しかけていた。
山内さんは白日会会員で、日展会友の洋画家。令和6年度の第11回日展の洋画部門で「プロヴァンスの道」が特選に選ばれ、自身、2度目の受賞になったという。名古屋芸術大学大学院修了で、2013年の第48回昭和会展で文学でいう芥川賞のような東京海上日動賞を獲得するなど、活躍が続いている。今春、中学の教室の窓から見たという景色を描いた作品「煙突の見える場所」を橋北中学校に寄贈もした。
完成した生徒の作品は、11月1日の文化祭、11月3日の地域イベント「橋北ごちゃまぜ祭り2024」で校内展示される。3日は一般の人の観覧も歓迎するという。