「南楠鯨船まつり」が10月12日、三重県四日市市楠町南五味塚地区で始まった。約5年ぶりに13日との二日間とも晴天に恵まれそうで、船を曳く地域の人たちの意気も高い。青空が広がった朝、南御見束神社から金色の装飾がまぶしい鯨船「龍神丸」が出発する「出船」の行事があり、大勢がカメラを手に見守った。
南楠鯨船保存会(竹野兼主会長)を中心に地域あげて伝統行事の歴史を守っている。今年は昨年より20人ほど多い約270人が練りに参加。法被姿の女子の姿も見慣れた景色になってきた。
南御見束神社では、練りの安全などを祈る神事があり、午前8時半ごろ、神社の鳥居をくぐって龍神丸が地区へと繰り出した。大小の張り子の鯨が先に鳥居を出ると、それを追うかのように、銛を放つ役をする「踊り子」らを乗せた船が姿を現わし、見物客らの興奮を呼んだ。
途中、開栄町の新築住宅の前では、お祝いの練りで、鯨役の人たちが大きく転がるなど大サービスの演技。みんなで万歳をしたあと、若い衆が施主を胴上げして、周囲の歓声も大きかった。
踊り子の1人、楠小5年の服部新汰さんは自宅前での練りで演技。鯨めがけて銛を放つ演技では、青空に向かってヒョウ、と高く飛ばし、喝采を浴びた。
13日は午前8時半に宮崎本店を出発し、楠町商工会(午後1時40分)、JAみえきた楠支店(同2時5分)など約20カ所を巡って練る予定で、午後6時、南御見束神社に戻る「入船」の行事がある。
保存会によると、南楠鯨船まつりは幕末に始まったとの説があり、1880(明治13)年には神社に「大網」という組織ができて神社に奉納する祭り行事として盛んになっていたという。昭和初期には祭りは青年団が引き継ぎ、1960年に南楠鯨船保存会が発足したという。1996年に四日市市の無形民俗文化財に指定されている。