「お月見どろぼう」 子どもの秋の風習 四日市の一部に残る

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【家々を回る子どもたち=読者提供】

 四日市市の一部地域には、中秋の名月に子どもたちが月見の供え物を盗んでよい風習「お月見どろぼう」が受け継がれている。市立博物館学芸員の北原里穂さんは、2021年から同風習の認知、実施状況を調査しており、「地域の大人が協力し、子どもたちが楽しむ温かい行事。末永く続いてほしい」と話す。

 昔は収穫の感謝を表す伝統行事として、日本各地の農村部で行われていた。供え物が里芋から月見団子、菓子に形を変えた現代では、主に町内会や育成会が運営しているが、少子化で実施地域は減少しているという。

 アンケートから始まった北原さんの調査では、内部・八郷・大矢知地区での実施報告が多かったそうだ。戦後は食糧不足で途絶えたが、1960年代に復活し、80年代頃から玄関先や門前に置かれた菓子を子どもがもらって歩くイベントになった。時間帯の他、小学生以下対象、声はかけずに静かに取る、1人1個までなどのルールは地区で異なる。箱や籠、盆に用意された菓子の種類はスナック菓子が多く、開始時刻の早い地区では溶けてしまうチョコレートや熱くなるジュースはあまり置かれない。

【玄関先に用意された菓子=読者提供】

 毎年、菓子を用意する海蔵地区の40代主婦は、「『夕方5時以降、中学生もよかったらどうぞ』とお菓子にメモを添えたら中学生が集まってきてかわいかった」と思い出を語る。「今年は我が子が小学6年。最後のお月見どろぼうを一緒に楽しみたい」。
 
まちなかでもイベント開催

 諏訪栄町のすわ公園交流館では、9月22日(日)午後1時から同3時半まで「お月見どろぼうin四日市&絵本のひろば読み聞かせ」を開く。風習を次世代につなげようと10年前に始めた小学生以下対象の無料スタンプラリー形式のイベント。月見に関する読み聞かせも楽しめる。申し込み不要、先着200人で受付は3時まで。