三重県四日市市議会の総務常任委員会で9月2日、公共施設に対する企業などのネーミングライツ(命名権)を導入する考えを市が説明した。これまで、市が慎重な立場を取ってきた分野だが、地元の企業が人材確保のためにもっとPRしたいと考えるようになったことなど状況の変化もあり、検討を進めたという。順調に行くと、来年度中に、まず総合体育館から企業名のある新しい名称でオープンすることになるという。
市は、独自の総合的検討から、ネーミングライツを導入するうえでの三つの視点を定めたという。①他市町の住民を含む不特定多数の利用者が見込める大規模公共施設において、おおむね、年間500万円以上を負担可能な事業者がある②四日市市を名称に残すことに企業の理解が得られる③本市が導入を検討する大規模公共施設に事業者側にもそのニーズがある、との内容だという。
並行して、事業者アンケートを 実施し、44社中25社の回答を得た。応募について前向きなのは4社で、「興味ある」を含むと、12社が前向きだったという。理由としては、人材確保へのPR、スポーツや文化での地域貢献などが挙げられた。年間500万円以上負担してもよいとの企業は2社あった。施設の名称に「四日市市」を残すことには12社中9社が肯定的な意見だったという。希望する施設では、総合体育館が9件、文化会館が7件、四日市ドームが6件の順だった。また、市民アンケートも実施し、607人中316人から回答を得た。「複数の名前があると混乱する」との意見もあったが、おおむね、「施設の維持管理に資金を使えるのはよい」など理解をえられたという。名称に「四日市市」を残すことも賛成する意見が多かったという。
こうした結果から、三つの視点は確保できるとして、市はネーミングライツの導入に向け、具体的な手続きを進めていくとした。2024年度は総合体育館について施設特定募集型で公募を実施したいとし、2025年度中での新名称での施設オープンをめざすという。
委員からは「殿様商売のような進め方をしないよう」「ネーミングライツを知らない人もまだ多い。他の自治体の話だが、お金がないので名前を売ったのかと言う人もいたそうだ。しっかりとこの制度について説明をしていってほしい」などの意見が出された。
ネーミングライツについては、あらたな財源を確保し、民間の雇用促進などをめざし、市は2009年度にアンケートをしているという。しかし、企業からニーズが少なく、導入しなかった。また、施設名に「四日市市」がある方が、全国に四日市のことを知ってもらう効果は高いとの判断もあったという。しかし、景気回復基調や少子化の中で、市内の企業も地元から人材を雇用したいニーズがあり、一方、企業の社会貢献意欲も高くなっていることから、今年の2月議会でも一般質問があり、市側が可否を判断するなどと答弁していた。