三重県の四日市市議会は6月20日、常任委員会での審議が始まった。PFAS(有機フッ素化合物)汚染の実態把握を求める請願は、8月定例月議会まで採決の期限を延期することとした。近鉄四日市駅西にあるユマニテクプラザに入居した東京大学地域未来社会連携研究機構三重サテライトが6月いっぱいで引き揚げることも報告された。
PFASの請願は都市・環境常任委員会で審議された。請願提出者の四日市公災害市民ネット代表世話人の松岡武夫さんら3人が出席し、市全域での水環境の汚染の実態を早急に把握するよう求めた。欧米では日本に比べ管理の目標値が厳しくなる流れにあり、四日市公害を経験した四日市だからこそ、早く調査を始めてほしいとの要望も語られた。
委員や市からは、半導体工場のキオクシアが、独自の判断で4月から活性炭による排水の吸着処理などを始めたことが報告された。委員からは「国の方針がはっきりしていない状況もある。この問題は特定の企業の事象とみるのではなく、市は請願者と連絡を取り、市民の安全に結びつけてほしい」「個々のデータを団体がこのように指摘された以上、サンプリング数をもう少し増やすなど、行政側がきちっと調べてもらいたい」など請願採択に賛同する意見があった。
一方、「市もサンプリングを3カ所に増やして、6月中にも調査するとの方針で、そうならば、その結果を見て、判断してもよいかと思う。請願の採否の判断はいったん保留すべきだと考える」との意見があり、採決の結果、委員会としては8月定例月議会まで採決の期限を延期するとの判断をした。
今議会最終日の7月2日、委員長報告のあと、本会議でも同じ結論になれば8月議会までにあらためて委員会を開いて採決する。本会議で延期の決定が否決されれば、その場で採択についての採決に入る運びとなる。
東大の機構の三重サテライト引き揚げは、総務常任委員会で報告された。市によると、「三重県との連携などサテライト拠点としての機能を十分に果たせておらず、三重サテライトを常設する費用対効果が見込めないことから、三重サテライトを引き揚げる」との報告があったという。
東大の機構は、2018年11月に東大と三重県が連携協定を締結し、翌年、ユマニテクプラザで「知の拠点づくり」を目指すとして5者(東大、三重大、県、県産業支援センター、みえ大橋学園)が協定を締結、機構が三重サテライトを設置した。その後、四日市市は機構と連携協定を締結し、地域の研究などで協力してきたという。一方、5者のうちの県産業支援センター北勢支所が今年4月、ユマニテクプラザから県工業研究所窯業研究室に移転する動きもあった。家賃負担とのバランスなどが考慮された可能性があるという。
市は、スマートシティー化を視野に入れたシンポジウム開催や、多国籍市民の社会参加の状況調査、半導体をめぐる特別講演など、この間、幾つかの成果があり、機構とは、東京に引き揚げたあとも協力関係を続けると述べた。
委員からは「新大学設置をめざしている時に、四日市から撤退するようなイメージにならないか」との声もあり、「この際、目指す連携大学に東大も参画してもらえるよう頼んではどうか」との意見もあった。