三重県菰野町のパラミタミュージアムで4月5日、岡田文化財団設立45周年記念「細川護熙(ほそかわ・もりひろ) 美の世界展」が始まった。第79代内閣総理大臣も務めたが、のちに政界を引退し、茶陶や書画など独自の美を求めてきた。今回は、その後も油絵、水墨画、襖絵など活動の幅を広げた細川さんの制作の全体像を紹介する内容になっている。2023年に細川さんが奉納した京都・南禅寺の塔頭寺院・天授庵の「赤壁舟遊図」(襖絵八面)を寺外では初となる特別展示をしている。6月2日まで。
展示は絵画58点と工芸43点の計101点。パラミタミュージアムでは2008年に陶芸を中心に細川さんの作品を展示したが、その後、細川さんは京都、奈良などの寺に襖絵、屏風、障壁画を奉納するなど活動の幅を広げてきた。そこで今回、拡大する細川さんの美の世界を紹介することにしたという。
特別展示の「赤壁舟遊図」は、寺から外に出て展示されるのは初めてだという。南禅寺の塔頭天授庵には細川家中興の祖とされる細川幽斎の墓があるといい、長谷川等伯の描いた襖絵の換え襖として、細川さんが、お気に入りの蘇軾の「赤壁の賦」を画題に描き、2023年に奉納したという。
襖絵では、京都の龍安寺に奉納した襖絵の下図、「第一の龍」から「第九の龍」などがあり、龍に対して、形姿、感情、年齢、見識で九つに変容する姿を描こうとしたことなど、細川さんの制作過程を知ることができる。
油彩画では、細川さんのイメージで描いた「百鬼蛮行~私のゲルニカ~」が目に飛び込んでくる。「中宮寺菩薩半跏像」のほか、陶器の壺に油彩でヒマワリを描き、青と黄が鮮やかな「壺絵ひまわり」も展示されている。油彩と銀箔の「桂林」も独特なスケールの大きさを感じさせている。
「信楽宝塔」「信楽陶仏」や茶碗などの陶芸の作品、キャンパスに漆で描いた「ガラシャ」「富士」などの絵も独特の材質感などで味わいがある。
細川護熙さんは1938年1月、旧熊本藩主細川家の18代目当主として生まれ、熊本県知事、衆参両議院、内閣総理大臣などを務めた。政界を引退したあとは神奈川県湯河原の自然に囲まれた自宅で晴耕雨読の生活を楽しみながら制作活動を続けているという。
期間中、5月5日は子ども写生大会が午前10時~午後3時にあり、多くの子どもたちの来場が予想されるという。同12日午後2時~同3時には「からくり人形が『能』を舞う」がある。
パラミタミュージアムの入館料は一般1000円、大学生800円、高校生500円、中学生以下は無料。