三重県の四日市市消防本部北消防署は3月15日、火災現場から女性を助け出したとして、四日市市の建設業多湖雄飛さん(29)に消防協力者への感謝状を贈った。消防車が現場に着いた時にはすでに火勢が強くなっており、多湖さんの行動がなければ犠牲者が出ていた状況だったという。
感謝状贈呈式がこの日、北消防署であり、伊藤誠也署長が記念品とともに多湖さんに手渡した。伊藤署長は「勇気ある行動、ありがとうございました。能登半島地震でも自助や共助の大切さがあらためて言われていますが、その共助のところで力をいただき、心強く思いました」などとお礼を述べた。
火災は1月27日深夜にあった。たばこを吸おうと、多湖さんがアパート2階の部屋の窓を少し開けると、助けを求めるかすかな女性の声を聞いた。バルコニーに出ると煙が出ていて、隣家の1階の窓から女性が助けを求めているのが見えた。
多湖さんは寝間着のまま1階に降りて隣家へ。たまたま部屋にいた友人に119番通報を頼み、自分はフェンスを越えて、窓から女性を抱えて引き出し、安全を確保した。アパートの備えの消化器を見つけて初期消火をしようと試みたが、火勢が強くなり、どうしようもなかったという。当時、81歳だった女性の家は全焼。女性は一時、集中治療室で治療を受けたが、今は社会復帰しているという。
「『助けなければ』という気持ちだけで、あの時は怖さも感じなかった。今になると、火は怖いもので、立ち向かう消防の人たちを心強いと思いました」などと話した。贈呈式には、火災当日、消火活動に出動した隊員らも出席し、多湖さんに拍手を贈った。