三重県四日市市が生んだ世界的な版画家、木下富雄さんの生誕100年を記念した特集展示が津市の三重県立美術館で開催中だ。「突き彫り」と呼ばれるギザギザの線で描く作風は、海外でも高く評価されている。展示は来年1月8日まで。
木下さんは2014年暮れ、91歳で亡くなった。県立美術館所蔵の作品のほか、自らも版画家で木下さんと交流が深かった四日市市の小原喜夫さん(77)が所蔵する作品などを含む62点を展示しており、版木や下絵、作品が掲載された書籍なども見られる。
木下さんは1923年、四日市市富田一色町で生まれた。戦後、30歳のころ、棟方志功の木版画が国際的な評価を得たことに触発され、油絵から版画に転身、独学で技術を磨いた。
1950年代から社会風刺を含んだ作品を生み出し、1958年には日本版画協会協会賞、1960年に伊勢湾台風を題材にした「災害」は国画賞を受賞した。
国際的にも注目された。米国シアトルやフィラデルフィアなどの作品展に出品。ノースウエスト国際版画展でシアトル美術館賞を受賞、ニューヨーク近代美術館、ブルックリン美術館、フィラデルフィア美術館などに作品が買い上げられている。
小原さんは、自ら開いた四郷版画館でも木下さんの作品を紹介してきており、今も木下さんについての研究や執筆を続けている。「国際的にこれほど評価された版画家が四日市にいたことを、多くの人に知ってほしい」と話している。
12月2日午後2時から、三重県立美術館の担当学芸員坂本龍太さんが「忘れえぬ『顔』の版画家 木下富雄」と題してスライドトークをする。定員150人(先着順)、無料。
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