「認知症=人生終わり、じゃない」、当事者の体験から伝える、四日市で丹野智文さんが講演

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 三重県四日市市の認知症市民公開講座が9月13日、市文化会館であり、宮城県出身で、39歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さん(49)が「認知症とともに生きる~当事者からのメッセージ~」と題して講演した。認知症だからと周囲が何もさせないようにすると、逆に本人の力をそいでしまう結果になるなど、「ともに生きる」関係を築いていくことの大切さを語った。【認知症への向き合い方について講演する丹野智文さん=四日市市安島2丁目】

 仙台市の自動車販売会社で営業マンをしていた丹野さんは、ある日、自分がどの客の担当なのか分からないなどの異変を感じ、悩んだ末に病院で検査を受けた。診断の結果を聞いて、「認知症=人生の終わり」のように感じたという。

 会社の理解もあって、内勤に移るなどして仕事を続けた。同僚の女性に「何に困っているんですか」と聞かれ、しっかり伝えることで自分が助けられ、気持ちも楽になることを体験。「周りの人も分からないから戸惑っているんだ」と感じたという。認知症の当事者ら多くの人と接するなかから、「できないことはサポートしてもらい、できることは自分ですればいい」というシンプルな考え方ができるようになり、「認知症=終わり、じゃない」と思うようになったという。

 丹野さんの体験は、貫地谷しほりさん、和田正人さん主演の映画「オレンジ・ランプ」にもなっており、丹野さんは今、認知症当事者のための物忘れ相談窓口「おれんじドア」の代表として、多くの人と認知症との付き合い方を探す人生を続けている。

 講演のあと、丹野さんは、四日市でさまざまな角度から認知症に向き合っている認知症カフェの運営者や医療福祉の専門家、企業役員らとのシンポジウムにも参加した。ほかに、四日市市の認知症に関する取り組みを高齢福祉課長の水谷留尉さんが説明、ロビーでは、認知症の当事者の会や支援グループなどの活動を紹介するコーナーも設けられた。(シンポジウムの様子)