市民団体の「四日市公災害市民ネット」は8月12日、例会を開き、全国で話題になっているPFAS(有機フッ素化合物)について意見を交わした。同ネットは7月10日に森智広市長あてに市全域の汚染の実態把握などを求めており、その回答が寄せられたため、会議で紹介し、意見を交わした。全体的に調査が徹底していないとし、「四日市公害を体験した四日市市だからこそ、しっかり調べてほしい」との意見が語られた。【有機フッ素化合物について意見を交わす会議の出席者ら=四日市市安島2丁目】
PFASは、炭素とフッ素の強い結合構造をもち、5000とも1万種類あるともされる。20世紀なかばからフライパンの焦げつき防止加工、炊飯器、ハンバーガーなどの包装紙、化粧品、レインコート、防水スプレーなど様々な生活用品に使われてきたほか、泡消火剤、自動車部品や半導体の製造工程などでも使われている。
現在、PFASの中ではPFOA(ペルフルオロオクタン酸)とPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)が毒性を指摘されて製造、使用の規制対象になっている。しかし、非常に分解されにくい物質のため、長年の使用で自然界に蓄積され、水道水の水源に近いところなどからも検出される例が世界中で確認されるようになったという。
四日市市では、環境省の調査で2019年度に海蔵川(海蔵橋で採水)のPFOA、PFOSの合計が102.3ng/L検出され、環境省の暫定指針値50ng/Lを大きく上回った。2021年度には48ng/Lだったが、依然、指針値ぎりぎりで、ほかの調査でも三滝水源地、三滝西水源地で二桁の数値が検出されたという。
同ネットは、PFAS汚染の調査を、市が水源として利用している22すべての井戸で調べるよう求めたが、市は7月31日の回答で、水道法では水質検査を給水栓で行うよう定めており、その規定に基づいて市内8つの配水エリアごとに検査するなどした結果、すべてが指針値の50ng/Lを下回っていることを確認。このため、井戸の原水で調査することは必要ないと回答した。
また、同ネットがPFOS、PFOAの代替化合物(PPHxS)についても検査項目に加えるよう求めたことについて、水道法で定期的に行う検査項目でなく、PPHxSの目標値などが設定されていない現時点では検査しても評価できないとしている。
会議では、これらの回答について、「水源地の値は複数の井戸の水が混ざっており、どこが汚染源なのか、井戸ごとに調べることは必要だ」などと指摘、「四日市公害を体験した四日市だからこそ、しっかり調べてもらいたい」との意があった。
PFASの指針値については、米国が以前の70ng/Lから4ng/Lに厳しくする方向で、日本も国レベルの専門家による会議で検討を始めている。しかし、国内の調査や研究が進んでいるとはいい難く、行方は流動的だ。
そんななか、国内でも、独自に規制を強めようとする自治体も現れている。長野市では2020年に指針値を超す58ng/Lの検出が水道水で見つかり、2025年までに新しい井戸の場所を決めることや、水質についても、国より厳しい25ng/L未満とすることなどを検討している。