源頼朝が富士の裾野で催した動物狩りの様子を、総勢約150人の仮装行列で再現する四日市市南浜田町の伝統行事「富士の巻狩り」。今年60回目の節目を迎える「大四日市まつり」で、2019年秋の諏訪神社の例大祭・四日市祭以来、4年ぶりに披露する。このほど、同町集会所で、頼朝を始めとする武将に扮する子どもたちの衣装合わせが行われた。【衣装を着け、堂々とした姿の子どもたち=四日市市南浜田町で】
鳥獣の駆り出しを受け持つ勢子(せこ)が、ほら貝や銅鑼(どら)、太鼓を打ち鳴らしながら練り歩き、体長約5mの張り子の大イノシシ、同4mの中イノシシをはじめ、ウリボウやウサギのハリボテを被った子どもたちが逃げ回る。それを弓役、大将役の家来を引き連れた馬上の源頼朝が追い詰め、槍で大イノシシを仕留める。奇跡的に戦禍を逃れ、今に伝わる絢爛豪華な金銀の刺繍が施された陣羽織の箱には、文政12(1829)年と記されたものもあり、江戸時代に確立した形式で祭事が受け継がれているという。
【緊張した面持ちで衣装の説明を受ける子どもたち】
今回、頼朝役を担う浜田小5年の川田倭士君は、初めて着付けた狩衣(かりぎぬ)と袴の衣装について、「お腹がきつい」と戸惑いながらも、「馬に乗るのが楽しみ」と屈託ない笑顔を見せた。着付け方を覚えたり、当日は傘や旗持ち、うちわで仰ぐ等、子ども武者を世話する保護者の役割も多い。川田君の母・純子さんは、「子ども時代に親しんできた祭りに親子で参加できてうれしい。親としても楽しみたい」と話した。
【源頼朝役の川田君】
同保存会員で、ケーブルテレビの大四日市まつり中継で毎年解説を務める前田憲司さん(64)は、「衣装や道具類の多くは個人所有の家宝。自治会に寄贈され保存しているものもあるが、古い衣装は生地の傷みがひどく、修理の術がない。頼朝の衣装は新調したものだが、資金的になかなか厳しい」と困難な状況を語る。人材もその1つで、大中イノシシに入って暴れ回る力のある若者さえいればいいというわけでなく、周りを固める警護役にはイノシシを制する経験と技術が必要だという。前田さんは、「祭りに興味があり、伝統の継承に一役買ってくれる方がいれば、ぜひ連絡してほしい」と呼び掛けている。
【倉庫にしまわれている大中小のイノシシ(右が大イノシシ)】
問い合わせは、「四日市祭南濱田町邌物 富士の巻狩り」フェイスブックページ(https://www.facebook.com/profile.php?id=100069605093577&locale=ja_JP)へ。