入場するあなたが審査員、菰野町で「パラミタ陶芸大賞展」始まる、投票は7月13日まで

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 入場者の投票で受賞者が決まる「パラミタ陶芸大賞展」が6月8日、三重県菰野町のパラミタミュージアムで始まった。全国の美術館、画廊、美術評論家などから「時代を代表する陶芸家」を推薦してもらい、上位6人に会場で作品を展示して競ってもらう趣向。作品はどれも独自の世界観を見せ、陶芸の現在を感じさせてくれる内容になっている。投票は7月13日まで、展示は同30日まで。【初日から多くの入場者が訪れた会場=三重県菰野町大羽根園松ケ枝町】

 2006年に初開催し、今年は17回目。投票で最も高い支持を得た作家は、7月23日午後2時に発表される。(6人の作家のみなさん。左から高山大さん、戸田浩二さん、川瀬理央さん、奥直子さん、佐合道子さん、酒井智也さん)

 東京生まれで、今は愛知県常滑市を拠点にする奥直子さんは、「“用途の無い”、エンターテイメントとしてのやきものをつくっています」という。幻想世界の生き物のような作品は、中が空洞で、陶器の表と裏が見えるようにしてあって、相反するものから成り立つ現実の世界をも見せる。(奥直子さんの作品「キオク或いはインショウ もしくは」)

 真っ白な珊瑚や、編み込まれたレースを思わせる作品。川瀬理央さんは「樹木をモチーフに器型作品を制作している」という。紐のようにした粘土を型の中でいくつも重ねて焼き、型をはずすと、そこに独特な味わいを持つ器などが現れるという。京都や金沢などでも活躍し、伊賀地域でも出品したことがある。(川瀬理央さんの作品「刻 c&s2023-1」)

 愛知県瀬戸市の酒井智也さんの作品は、色鮮やかな木製のおもちゃが並んでいるようにも見える。これらは、すべて、ロクロで成形したまるい形などを組み合わせて出来ているという。「想いを、抽象的なイメージとして具現化する」といい、ロクロを動かしながら、そこで浮かんだイメージを形にしていく。(酒井智也さんの作品「あピモみと おたニュわ」)

 三重県桑名市生まれで、今は金沢市を拠点にしている佐合道子さんは、「『いきものらしさ』を感じ取ることができるものをつくることが制作の基本」という。手びねりの手法などを組み合わせ、表面に多彩な柄や線描傷をつけた断片のように見える陶器の要素たちが、うねうねと動き出すように見える。(佐合道子さんの作品「溢れ、伝う」)

 三重県津市で活動する高山大さんは寺院に生まれ、「近年、自分のルーツと陶芸家としての関わりを模索しながら制作している」という。木や金属のように見える作品の表面は、「黒陶」と呼ばれ、もみ殻の炎の中で黒くなり、そこに漆を塗って焼くという複雑な工程を踏む。(高山大さんの作品「黒陶拭漆茶器」)

 愛媛県生まれで、今は茨城県笠間市を拠点にする戸田浩二さんは、伊藤東彦氏に師事し、東京などで活躍している。「奇をてらわず、普遍的ななかから美しさを表現しようと心掛けている」という。今回の展示の中では伝統的な陶芸作品のようにも見える作品たちだが、展示空間の中に入ると、積み重ねたうえでの現代性をも感じさせてくれる。(戸田浩二さんの作品「焼締水瓶」)

 「小嶋千鶴子 作陶の軌跡展」を同時開催している。パラミタ陶芸大賞展が小嶋さんの思いから生まれたこともあり、一周忌を迎えたこの時期の同時開催になったという。岡田屋からジャスコ、イオンへとつなげた経済人の顔と別に美術への造詣が深く、パラミタミュージアムを開設し、名誉館長になった。今回、茶碗、花器、陶人形など約160点を展示し、さまざまな表現に挑んだ故人の作陶の軌跡をふりかえるという。(小嶋千鶴子さんの陶人形)

 会期中は無休。入館料は一般1000円(4枚セット券3000円)、大学生800円、高校生500円、中学生以下は無料。