三重県を拠点にする塾・予備校eisu(鈴鹿英数学院)でCOO(最高執行責任者)を務める伊藤奈緒さんが、初の著書「教育による日本再興論 教育は人と社会と国の未来を決する」を4月に発表、1カ月にならないうちに出版元のIBCパブリッシングが第4刷を決めるなど好評だ。AI時代でも勉強することは通用するなど、知的研鑽への努力を信じる勇気も感じさせてくれる内容だ。5月27日、著書のエッセンスを語る記念講演会が四日市市総合会館で開かれる。【著書を発表した伊藤奈緒さん=eisu提供】
大学受験生の人気英語講師だった経験を踏まえ、分かりやすく考えを伝える文章は、難解さがなく、タイムリー。ロシアによるウクライナ侵攻、物価高騰や日本の低迷、岸田文雄首相の「異次元の少子化対策」会見など、最新の現実の状況と合わせ鏡のようにして、一気に読み進められる内容になっている。
「知識を覚えるのではなく、応用して課題を解決できる力が必要」などという最近の風潮に、「暗記も含めた基本的な知識の蓄積があってこそ、初めて応用力も発揮できる」と主張する。受験ノウハウの本ではないが、今の勉強は無駄にならないと説く内容は、受験生への励ましにもなるだろう。
これからの受験勉強を勝ち抜くには、何より問題文を理解するための国語力を養うことが大切だという。三重大学大学院地域イノベーション学研究科で研究した共通テストの分析などから導いた考えで、著書の重要な柱のひとつになっている。序章から第12章までの構成で、約230ページ。1760円(税込み)。
伊藤さんは、現在の松阪市の生まれで、大学卒業後、ミス三重などの活動をしたのち、自らも小学生の時から高校・大学受験に至る7年の間通っていたeisuに入社した。大学では社会学が専門だったといい、最初の4年間は英語講師としての塾の仕事のほか、夜中に自分の勉強をする日々。「そのころ、どんな歌が流行っていたのかとか、一切思い出せないほど勉強ばかりしていた」という。その徹底的な基礎学習の積み重ねや苦労の体験が、今回の本にも反映しているようだ。三重大大学院の研究が一段落したのが昨年春で、それまでの講演ノートなどをまとめ、執筆への思いが強くなったという。
伊藤さんは今、受験期よりもずっと前、小学校低学年からの教育に取り組みたいと考えている。また、活動中の動画配信「伊藤奈緒の教育チャンネル」は、教育などの専門家とのネットワークを広げ、自らの理想も伝えていく手段になっており、関心がある人が、これまでの番組のアーカイブを利用できるようにもしている。
出版記念講演会「9歳の壁を迎える前に知ってほしいこと」は午後1時半から。伊藤さんと、今回の著書の監修者でもあり、エイスウclubマネジャーでCOO秘書の岩倉淳さんが話す。入場無料。「伊藤奈緒の教育チャンネル」内のお知らせから参加申し込み画面に移行できる。