劇団キャラメルボックスの劇作家・成井豊さんの脚本を、名古屋の劇団「少年王者舘」の天野天街さん演出で制作する総合演劇ワークショップ発表公演「ナツヤスミ語辞典」。書類審査で選ばれた四日市市と近隣の13歳から65歳まで17人の俳優と、美術・照明・音響・制作の各部門の参加者12人が、5月28日(日)の本番に向けて士気を上げている。【息ぴったりの俳優部門の学生メンバーら】
青空に沸き立つ入道雲の背景に溶け込むように古いカメラを構える少女――。さわやかなデザインのチラシを手掛けたのは、制作部門の参加者3人。夏を象徴する光景、舞台のキーワードとなる小道具を効果的に使おうと案を出し合った。社会人演劇サークルに所属していた経験がある土井菜摘さん(34)は「俳優として舞台に立っていたので、裏方のことを学びたくて参加した。制作は、他部門より先を見て動く。今、(公演2週間前)当日のパンフに取り掛かっています」と話す。
【制作部門参加者の案が通ったチラシ】
主催の市文化会館・アートディレクター油田晃さんによると、定員をはるかに超える申し込みがあったそうで、中でも「若者の応募が多く、四日市の文化の未来に明るさを感じた」そうだ。俳優部門の核となるのは、中学生役を演じる中学校から専門学校までの学生6人。チラシのモデルを務めた四日市南高校2年の圡屋有彩さんは、小学校時代から、参加可能な舞台に積極的に挑戦してきた。「最初の読み合わせから、感情移入して泣きそうになった。登場人物が全員成長する心温まる物語」と見どころを話す。最年少の山手中2年桜井莉音さんは、演劇未経験だが、将来は俳優を目指している。「どう演じるかを考えられるようになった」と自身の進歩を実感。メリノール高校2年の人見建衣君は、「懐かしさやあこがれ、夏休みの詰め合わせみたいな作品」と、魅力を語った。
長編とも言える作品の制作過程の現場を実際に体験しながら学ぶワークショップは、全国的にも珍しいそうだ。舞台美術(4人)・照明(3人)・音響(3人)の各部門では、東海地域を中心に活躍する講師陣の指導の下、座学を経て具体的なプラン制作に取り組んでいる。
参加者の中で最年長、美術の古田圭子さん(65)は、これまでも市民ミュージカル等活動歴が長い。「年代の違う人と一緒にいると、固定されがちな考え方が改められて面白い」。シンプルだが、照明の効果で活きるセットを造るという。照明と音響部門は、俳優の稽古を見つつ、演出に相談しつつ、美術の仕事が進むのを待って、どのようにも対応できるよう準備している。
【制作に取り組む各スタッフ部門参加者ら】
会場は、四日市市安島の市文化会館第2ホール。午前11時、午後3時の2回公演。入場料は一般1100円、22歳以下550円。全席自由。問い合わせは同会館☎059・354・4301、ホームページ(https://yonbun.com/performance/19011.html)へ。