「子どもがこの卵しか食べないから、わざわざ買いにくる」と話す主婦がいる。毎日欠かさず食べているマッチョな筋肉のボディビルダーもいる。四日市市桜町の「きららのさと」の卵。こだわりの飼料が生み出す味が口コミで広がり、多くの顧客を掴んでいる。
養鶏所の設立は1967年。鶏の飼育と卵の出荷をしていた。社長の父の跡を38歳で継いだ今村孝之さん(65)が、その数年前から小売りを始めた。引き継いだ際に多額の負債を知り、立て直しを決意。「自信をもって作った卵なら、喜んで買ってもらえる」と考え、味にこだわった。
遺伝子組み換えではないトウモロコシを飼料に使い、コクが出るように魚粉を、臭みを抑えるために海藻を混ぜる。魚粉を1%多くすると味がくどくなるなどの違いが分かった。パプリカを混ぜると鮮やかな黄身になった。試行錯誤を繰り返し、今の飼料が完成した。
経営が安定したころ、鳥インフルエンザが流行し、店頭に来る客がいなくなった。風評被害は少なくなかったが、養鶏所は渡り鳥が飛ぶルートにはなく、鶏舎の衛生管理を徹底して感染を免れた。卵は日本人の食生活には欠かせず、安心安全で美味しい卵なら、顧客は離れないと自信を持てたという。昨年販路拡大を目指し「食の総合カンパニー」の三昌物産株式会社の一員として再スタートした。
宅配を担当し、顧客と顔を合わせる長原泰三さんは「安心安全で脂肪やコレステロールを抑えた美味しい卵でお客さんを笑顔にしたい」と話している。
※2023年2月4日(216号)発行 紙面から