四日市大学のベトナム人留学生、ドアン・ティ・ホン・ニュンさん(27)が四日市市での就職を決め、まもなく新社会人になる。コロナ禍で難しい大学生活ではあったが、友人や大学の支援にも助けられ、4年間の学業を修めた。16日は四日市大学の卒業式。ドアンさんは同い年のベトナム人男性と最近結婚したばかりで、新婚とのダブル新生活の春になる。【就職と新婚のダブル新生活が始まるドアンさん=四日市大学】
ベトナム中部の中心都市ダナンの出身。父、母、兄との4人家族で育った。地元の大学で観光を学んだが、桜で彩られた姫路城の写真を見て、日本に行きたいという思いを強くした。
■姫路で日本語を勉強し、四日市大へ
大学を卒業すると、来日して兵庫県姫路市の日本語学校に通い、留学生の支援が充実していることなどから四日市大学を進学先に選んだという。市内の大型スーパーで4年間アルバイトをしながら総合政策学科で学んだ。「友達の相談に乗ることも多く、頼られる人柄でした」と留学生支援課の担当者は話す。
■大学祭で料理の腕ふるう
1年生の時は普通の大学生活を送ることができ、大学祭「よんよん祭」ではベトナム料理の模擬店を開き、趣味でもある料理の腕をふるった。ネパールやインドネシア、中国など、ほかの国の学生との交流もいい思い出だ。
2年生になると新型コロナの感染が広がり、大学は講義を開けなくなった。大学祭などの行事も自粛になり、社会見学などの学外活動もあきらめることが多くなったという。1年ほどして、学内の講義も増えていったという。
■四日市の朝日土木に就職
ドアンさんの就職先は、四日市市川原町にある朝日土木株式会社。1952年設立で、築堤護岸、橋梁、舗装など国、三重県、四日市市の公共工事も数多く請け負っている会社だ。四日市大学の留学生の先輩社員が3人いて、その働きぶりから、南哲生社長は「留学生は十分に戦力になってくれる」と考えている。公共事業では膨大な書類を作成することが求められ、漢字の読み書きが必要だが、「ドアンさんの入社試験の論文は手書きで大変立派なものだった」と、漢字圏ではなくても、初のベトナム人留学生の採用に不安はなかったという。ドアンさんも先輩の話を聞くなどし、「一緒に働く人たちといい関係ができそうで、長く働きたい希望をかなえられそう」と感じたという。
■「考えるより、まず行動」
経済力が落ちたともいわれる最近の日本。ベトナムの人はどう見ているのか気になって尋ねてみた。「今でも日本は頼りになる国だし、ベトナムの多くの人は日本が好きです」と答えてくれた。「考えるより、まずは行動するタイプ」だというドアンさん。新しい生活も前向きに切り開いていく。
~四日市大学の留学生、8割が日本各地で就職~
四日市大学では8カ国166人の留学生が学んでいる。かつては中国の学生が多かったが、最近はベトナム、ネパールが上回っている。多くはアルバイトをしながら勉強と両立させている。約8割の学生が日本各地へ就職しており、農業や外食チェーン店の経営で独立して成功した卒業生もいる。大学では2003年4月から留学生の支援組織を設け、教育や生活で困ったことがあると、親代わりになって相談に乗っている。
(2023年3月4日発行の第217号にも掲載しています)