創業明治25(1892)年の伊藤鰹節店(四日市市東阿倉川)の四代目社長の川村公博さん(55)は、日本の伝統の食を守るため仕入れや加工、商品開発に奮闘。自社商品を利用したスープのラーメンを提供する店を開店するなど挑戦も続けている。
川村さんは大学卒業後に商工会議所に就職。市民参加型イベントの事務局を務め、ラーメンなどの模擬店を出していた。10年勤務し、2002年に義父が社長を務めていた「伊藤鰹節店」に入社した。
鰹節製造業者から仕入れた鰹節を削り、品質の良し悪しを学んだ。脂が多い鰹節は削ると粉状になってしまう。そのため目利きは重要なポイント。製造会社に出向き製造工程を視察するなど鰹節に徹底的に向き合い、鰹節を削る刃の調整の経験も積んだ。時代の流れで同業者が閉店していく中、品質の向上で信頼を得て、和食店やラーメン店など取引先を増やした。
イベントの出店も続け、産地の異なる良質の鰹節をブレンドした和風スープのラーメンを提供。友人に勧められ12年に諏訪栄町の商店街「二番街発展会」に濃厚魚介スープが自慢の「きみちゃんらーめん」をオープンした。特注の麺や自家製煮玉子も魅力のラーメンは評判を呼び、冗談を飛ばす明るいキャラクターも人気をとなり、塩浜街道店など店舗を増やした。
13年に四代目社長に就任。佃煮店には佃煮に合った削り節にするなど、顧客のニーズに合わせ商品開発に力を入れ、先代のころは2種類しかなかった商品を25種類に増やした。魚が捕れなくなっている昨今、鰹節を作る現地の人と親しくなり絆を深め、安定した品質の商品を提供できるよう努める。「創業100年を超す企業として感謝の気持ちを持ち、お取引様への期待に応え、日本の食文化の手伝いができれば」と笑顔で語った。
※2023年1月10日(215号)発行 紙面から