三重県四日市市の日永山興正寺(真宗高田派)にあるイチョウが色づいている。本堂の屋根を上回り、十数メートルはあろうかという高さで、日が照った時には緑から黄へと変わっていく葉のグラデーションが鮮やかだ。見ごろのピークまで1週間ほどだという。【色づいた興正寺のイチョウ。右下が天白正宣住職=四日市市日永2丁目】
本堂の南に立ち、26代住職の天白正宣さん(72)の話では、植えてから何年経っているのかはわからないが、天白さんが生まれたときにはすでにあったという。「隣に紅葉するモミジもあったが、四日市公害のころに枯れてしまった。このイチョウは生き残った。地元の人たちはよく知っている木です」。地元では目印のような木になっているらしい。
興正寺は貞観6(864)年、智証大師が草庵をつくったのが創建とされ、文暦元(1234)年に親鸞聖人が立ち寄った時に浄土真宗に改宗、その後、200年ほどして高田派になったという。山門は寛文8(1668)年の築で、市内では最古の門ともいわれている。天正3(1575)年、織田信長に仕えた武将、滝川一益の寄進により現在地に移ったとされ、その寄進状と、同11(1583)年の羽柴秀吉(豊臣秀吉)の禁制の文書は市の有形文化財に指定されている。