四日市港地区のイベントから市街地へ戻り、中央通りのクスノキの並木をめざした。居心地がよく歩きたくなる「まちなか」をつくるために四日市市が開いた催し「はじまりのいち」を歩いてみた。【緑に囲まれ、食事や喫茶などの店もある散歩道ができた中央通りのクスノキの並木】
中央通りはJR四日市駅と近鉄四日市駅、鵜の森までを約2キロでつなぐ大きな道路だ。四日市空襲のあと、市の中心部を区画整理し、クスノキの緑地帯を挟んだ70メートル道路が敷かれた。大きな並木は市の玄関の象徴になり、1990年代に大手新聞社が選定した日本街路樹百景にも選ばれたという。
中央通りでは自動運転車両の走行実験もされていた。将来、近鉄とJRの駅を結ぶ手段になる構想だ。市役所前を午後2時37分発の車両に乗った。国道1号交差点での渋滞があって8分ほど遅れての出発だったが、時速20キロ弱の速度で、静かな走行は快適だった。車内には運転を監視する乗務員がいて、信号の色が変わったことなどをパネルで指示していた。将来は、信号の変化も自動車が判断するようになる。長く乗っていたかったが、次のJR四日市の停留所でも乗車希望者が多く、席を譲った。
さて、市役所東の交差点で横断歩道を渡り、「はじまりのいち」のゲートをくぐると、クスノキの並木の緑に囲まれた散歩道が目の前に現れた。屋外は暑いが、緑のせいか、どことなく涼しい。散歩道の両脇には、手作りアクセサリーや軽食、喫茶などの店が並ぶ。
その先に、幅6.5メートル、長さ50メートルのスケードパークが見えてきた。この日は有名スケーターをゲストにしたイベント。大勢の若者がジャンプなどの技を見せていた。五輪で日本が大活躍したスポーツでもあり、駅に近い市街地にあるので利用しやすいだろうと思った。
30年以上前に四日市に住んだころはバブル景気の中で、市役所では近鉄四日市駅から市総合会館まで立体式の動く道路を通そうという話もあった。中央通りの交通量の増加を考え、緑地帯を取り払い、クスノキは広げた道路の左右にふりわけて植え直そうという声もあった。どちらかというと、緑地帯は邪魔もの扱いの印象だった。
当時のことを思うと、今回の散歩道はとても素敵に思えた。お店をのぞきながら緑の木陰を散歩できる市街地なんて、とてもぜいたくな気分にさせてくれる。中央通りの新たな魅力になるに違いない。
四日市市は、近鉄四日市駅の東に新しいバスターミナルや空中の円形デッキを設ける構想を発表している。その構想図を見ると、中央通りは道路の部分が広げられ、クスノキの緑地帯部分は移動しているように見える。昔のことだが、これも30年前、造園業者から「クスノキの植え替えは根の張り方から難しい」と聞いたことがある。四日市のシンボルにもなってきたクスノキの並木の魅力を生かせる市街地づくりを進めてほしい。