養蜂業を営む八風農園雅(菰野町田口)の渡邉雅洋さん(70)は、採蜜から瓶詰までを一貫して行っている。加熱も精製もしないはちみつは、本来の味と栄養が最大限に生かされている。
福島県で生まれ育った渡邉さんは、子どものころ親戚の人が作ったはちみつをよく食べていた。「体にいいものを作りたい」と、定年退職後に銀座のビルの屋上で養蜂する「銀座ミツバチプロジェクト」の講習会に参加し、養蜂を始めた。市販の国産はちみつのシェアは1割に満たず、ほとんどが輸入品だ。
ミツバチがスズメバチに襲われたりダニに寄生されたり、農薬の影響で大量死するなど最初は失敗の連続。今でも長雨でミツバチが蜜を採取できず収穫量が減ることも。巣箱の中で次世代の女王バチが生まれ、先代の女王バチが働きバチを連れて巣を離れてしまい、思うように蜜が集まらないなど、トラブルが起こる。それを未然に防ぐため巣箱内外の変化を見落とさないようチェックが必要で、ミツバチ用の防護服を着て4か所の巣箱を点検する。5月から6月が採取のピークだが、暑くなるこの時期はかなりの重労働。全て一人でこなし、ミツバチにとって最適な環境を整える。
渡邉さんのはちみつは、様々な花からとった蜜で作られる「百花蜜」で季節によって味や色の濃さが変わる。鈴鹿山脈の麓の八風街道周辺が蜜源で、良質な蜜が集まるそうだ。無添加非加熱のその味は「濃厚なのに喉に引っかからず、すっきりとした甘み」話す渡邊さん。2016年に県が選ぶ特徴のある優れた産品「みえセレクション」に「KOMONO蜜」という名称で登録され、同町のふるさと納税の返礼品にも選ばれている。渡邉さんは「本物のはちみつの味を知ってほしい」と、汗を流している。
※2022年6月4日(208号)発行 紙面から