日本写真作家協会の会員で、菰野町の芸術文化協会副会長などを務める同町大羽根園呉竹町の片出実さん(78)は、鈴鹿山系の自然を38年撮り続けている。「被写体に感動する力と集中力が大切。写真から何かを感じてもらえるように心掛けている」と撮影への思いを語る。【カメラを手に写真への思いを語る片出さん(右)、片出さんが撮影した早朝の地蔵岩(左)】
会社員だった21歳の時、働く人や祭りに参加する人など、生活の一場面を切り取る「人の内面を写し出すような」写真に出会ったのを機に、一眼レフカメラを買い、その作品を撮影した写真家・加納利一さんに師事。加納さんの自宅へ通って技術や心構えを学び、人物の撮影を中心に腕を上げていった。
30代後半のころ、仕事で御在所岳の写真を撮り始めた。自身が「山岳写真」としてイメージしていた標高3000メートル級の山々とは違ったが、「固定概念を捨て、ゼロから始めよう」と見方を変えると、鈴鹿山系の「ほっとするような風景に心が癒やされた」そうだ。
【湯の山温泉街の近くにある滝つぼ(片出さん撮影)】
森や川などの風景は、時間帯や季節によって明暗や色味に大きな変化があり、更にアングルやポジションを変えると違う景色が見えるという。同じ場所に何度も通い、納得がいくまで撮るのはもちろん、光や色、花や霧など、自分で強く表現したいものを風景の中に見つけ、構図を決めている。
これまでにワールドフォトコンテストや全国規模のコンテストで多くの賞に輝き、2014年には鈴鹿山脈の自然をテーマにした写真集を出版した。今は水面を彩るコイの写真撮影にも熱中しているそうで、「写真を見てくださった方や被写体になった方の役に立てるような作品を生み出していきたい」と意欲をのぞかせた。
YOUよっかいち8月8日付186号6面から