不急不要の外出や集団での飲食などの自粛が続くなか、ホテル業界では宴会やパーティーなどのキャンセルが相次いでいる。プラトンホテル四日市(四日市市西新地)の黒田美和支配人は「今だからできること、気付けること、役に立てることを」と気を引き締める。【食材のロスのため、弁当を作った近藤料理長(左)=四日市市西新地で】
普段、料理に使う野菜などは生産者から直接仕入れているが、宴会が当日キャンセルになった日、近藤篤史料理長は、行き場のなくなった野菜を「もしよっかたら」と従業員たちに勧めたところ、「ぜひ買います」と、思わぬ反応。話を聞きつけた他フロアのスタッフも集まり、急遽〝即売会〟になった。
系列会社が経営する飲食店の店長らも「うちの店で使いたい」と購入し、取引先からも「今度は声を掛けて」などの声ももらったという。同ホテルスタッフの味岡夕里菜さんは「思わぬ形で普段提供している野菜を口にし、改めておいしさや良さを感じた」、黒田支配人も「お世話になっている生産者の方々に迷惑は掛けたくない。従業員にとっても、生産者への感謝の気持ちを再確認してもらえる機会になった」と話した。
また、仕入れる食材のロスを減らせるよう、社員向け弁当を料理長が作り販売するようにもなった。黒田支配人は「会社全体で生産者の皆さんの力になりたい」と意欲をのぞかせた。
同ホテルでは昨年10月から、首都圏で居酒屋を経営し、尾鷲・熊野で水産加工や定置網漁を手掛ける「ゲイト」と共同で、「食の上流へさかのぼる」というプロジェクトを展開。スタッフが生産者や加工業者を視察したり研修をしたりし、その経験を通じて生産者への思いを強くしている。